筆者のXアカウント@jefftoshimaに、先週から書き込んできた信用不安リスクが、米地銀信用不安というかたちで昨晩、表面化した。
簡単にまとめれば、サブプライム(低所得者)向け自動車ローンに特化した企業が破綻。更に、自動車部品メーカーの隠れ債務が発覚して破綻。サブプライムとか隠れ債務などの言葉はリーマンショック時にマーケットを震撼させたので、即座に金融不安の兆しかと色めきたっていた。その矢先の昨晩、NY市場の午後、米地銀2行が、顧客の不正行為により損失が生じたことが報じられたのだ。
NY市場では、株が売られ、外為市場では、円が買われ、金価格は、一日で100ドルを軽く超える「暴騰」を演じた。
冷静に見れば、ローン焦げ付きの金額は小さく、金融市場を揺るがすリーマンショックの再来とはいえない。
とはいえ、市場の受け止めは「不気味」の一言に尽きる。
とりあえず、株は売って、金を買っておくという投資行動が、益々、顕著になる。
5,000ドル、30,000円が、絵空事とは言えなくなった雰囲気だ。
まぁ、円高に振れたことが、円建て金価格の上昇に若干の歯止めとなる程度。
今後は、まず、不良債権を発表した2つの地銀が、氷山の一角なのか否か。既に、自動車関連事例のほうで、隠れ債務を見抜けず、少額ながら焦げ付き損を発表したJPモルガンのダイモンCEOは、「ゴキブリ一匹。まだ、数匹いる」と懸念を表明していた。その数匹のうちの二匹が、早くも現れたという流れになっている。
金市場のほうは、既に、様々な複合要因で、前代未聞の価格水準に達していたわけだが、ここにきて、大きなゴキブリっぽい存在の登場で、新たな買いがドッと入り、市場から売り手が消えたかの如き様相だ。
しばらくは、このボヤが大火事になるのか、市場は身構えることになろう。トランプ大統領にしても、移民に対する規制を強化させたことが、ヒスパニックのサブプライム層の自動車ローン返済難を誘発して、貸し手の銀行側は、「隠れ債務」として粉飾するという展開になろうとは、想像もしていなかった事態であろう。対策として、火に油を注ぐごとき愚策に走らねばよいが。
そして、不安感が金価格を更に上昇させよう。
なお、昨晩は、プラチナにも飛び火。1,700ドル台に乗り、中期的に2,000ドルが視野に入ってきた。銀も地味に上昇している。貴金属セクター内での循環物色を想起させる市場環境だ。
なお、中級者向けには、本件が、プライベート・クレジットへの疑念を強めることを指摘しておく。ノン・バンク経由のマネー調達ルートで、巨額の投資資金が、ばら撒かれ、その実態は、公表されないため、誰も正確にリスクを把握できていない。要経過観察である。


