生き馬の目を抜く、といわれるほど競争が激烈なNY市場の最前線では、潮目が大きな転換点を迎えるとき、いち早く、新常態(ニューノーマル)に適応したものが勝つ。

今年のジャクソンホール会議は、たしかに、歴史に残る、転換点であった。
しかし、それは、パウエルFRBが、インフレから雇用に金融政策の軸足を移すことを明言したからではない。

NY市場の最大関心事は、トランプ大統領のFRB乗っ取り作戦であり、ジャクソンホールは、パウエルFRBからトランプFRBへの歴史的転換点を象徴するイベントとして注目されたのだ。

もはや、トランプ氏の戦術は、パウエル氏の言動を悪しざまにけなすことではない。FRB理事の過半数を自派で囲い込み、FOMCをトランプ色に染めることだ、との見解がジワリ拡散しつつあった。
パウエルFRB議長がジャクソンホールで講演した8月22日、トランプ大統領は、クックFRB理事の住宅ローン疑惑について「同氏が辞めなければ解任する」と明言した。NY市場のトレーダーたちの関心は、中央銀行会議開催中のジャクソンホールからワシントンに移り、次期FRB理事候補の人選が話題になっていた。

パウエル氏が、9月利下げの可能性を示唆しても、既に、市場は織り込み済み。米株価は急騰したが、実態は空売りの買い戻しが多く、利下げ歓迎ムードは短命に終わった。
市場の合言葉も、「FRBには逆らうな」から「パウエルFRBを疑え」に既に変わっていたが、直近では「パウエル氏は既にレームダック」に変わりつつある。

このような状況下で、NY市場は9月1日労働者の日を含む3連休を迎える。
例年、レイバー・デー・ウイークエンドを境に、秋相場突入となる。

9月FOMC前に発表される雇用統計とCPIが、パウエル議長の本音を試す経済統計として注目されているが、ウオール街の話題は、もっぱら、FRB次期議長、FRB理事、FOMC参加の地区連銀総裁の人事問題が中心となろう。ワシントンのロビイストたちを臨時アドバイザーとして迎えるファンドもある。
まずは、法廷闘争必至のクック理事疑惑問題の趨勢、更に、NY債券市場のイールドカーブのスティープ化の度合いが強く意識される。

2025年の秋相場は、現職大統領の中央銀行強制介入という前代未聞のテーマで始まることになろう。