金のスポット価格上昇を示すグラフ


世界中のマーケットが注目したジャクソンホール中央銀行会議で、パウエルFRB議長が、金融政策の軸足をインフレ退治から失業・労働問題に移すことを明言。
これは、インフレ収束のための高金利政策から、やや停滞の兆候を示している労働市場を支えるための低金利政策に、金融政策を変更すると解釈される。具体的には米利下げを9月FOMCだけではなく、年内2-3回実行することだと、市場では受け止められた。
利下げは、金利を生まない金には朗報ゆえ、KITCOグラフの青線の如く、講演中に金は大きく反応した。
株も急騰。
外為市場では146円台と円高気味に振れた。

さて、この事象をどう見るか。
私見では、マーケットは既に9月利下げを織り込んでいたので、金価格の急騰は続かないと思う。
眞の問題は、トランプ大統領の、FRBへの、あからさまな利下げ圧力だ。このまま、利下げが決定されれば、トランプ氏に押し切られたと見られても仕方あるまい。

ときあたかも、トランプ氏は、クックFRB理事をクビにすると息巻いている。同氏の個人的住宅ローンに虚偽ありとの批判だ。仮にクック氏が辞任した後の空席に、トランプ氏の息のかかった人物を据える魂胆が透ける。徐々に、ホワイトハウスによるFRB乗っ取りが進行しているのだ。

仮に、トランプ色が濃い新FRBが、力づくで、利下げを連発したら、どうなる。やっと、落ち着き始めたインフレが再燃は必至だ。
選挙民にとっては、解雇増も困るが、物価上昇も困る。
それでも、来年、中間選挙を控えたトランプ氏は、インフレ・リスクを軽視して、利下げを進めるのか。

2026年にかけて、大きな問題が浮上しよう。
金市場の視点では、不況解雇もインフレも、どちらも買い材料。
両方同時に進行するスタグフレーションともなれば、本欄で何回も繰り返してきたように、金の独り勝ち。
但し、日本経済も、米国のスタグフレーションの影響をまともに受けるから、日本人として、金が上がって、素直に喜べる状況にはなるまい。

最悪の状況に対して、金がリスクヘッジとして、働く、という程度に理解しておくべきだ。金がスタグフレーションを鎮静化することは出来ない。

なお、パウエル講演も、利下げ決定というほどの強い論調ではない。9月FOMCまで、まだ雇用統計とCPIと1回ずつ残っている。その結果次第では、ジャクソンホール発言を取り消す如き言い回しが使われる可能性もある。
「利下げ方向に向くが、あくまでデータ次第」なのだ。

さて、今日の写真は、秋めいてコスモスの花に囲まれるオッサン(笑)