今日は、金についてではなく、日米関税協議合意内容に重大な齟齬が露見した問題について、筆者の思うところを書く。

昨晩、米CNBCに生電話出演したトランプ大統領。日本にとって問題の部分は、関税が米国一般市民にもたらす恩恵について、問われたときであった。
答えるトランプ氏は、まず最初に「ジャパン」の事例を持ち出した。「日本の事例を見よ。我々は5,500億ドル近くを勝ち取った。
プロ野球選手の契約金の如く、「これは、我々のマネー(our money)」と2回繰り返し、我々の思うように使える、と強調した。更に、日本は外国に門戸を開いた。これまで、あり得なかったことだ。日本でビジネスをしようとしても、逮捕される。許されないことであった。それが、今や、米国産のコメまで受け入れる。誰もが信じられなかったことだ。もっと重要なことは、我々の自動車も受け入れることである。あの美しいフォードF150車をだ。」

この発言に対して、スタジオの3名のキャスターは、違和感も表さず、インタビューを進めた。

筆者は、早速、NYの親しい市場関係者たちに、関税措置官報記載問題を含め、意見を聞いてみた。(関税措置については、米国官報に記載の内容が日本側の合意説明と食い違っている)。「我々は、日米関税協議は、合意したと理解している。」今更、何を、と言わんばかりだ。もし、この段階で、日米関税交渉が暗礁に乗り上げるようなことがあれば、日本株は売りとの見解も複数あった。

結果的に、トランプ流のディール(取り引き)に、してやられた感があるが、日本側にも問題はあった。参院選の論戦たけなわの時期に、下手すれば、日本国内に多数の失業者が出かねない対米通商問題が殆ど論点にならず、ひたすら、米価や消費税問題に国民の関心が集中したことだ。米国側にしても、日本の首相が変わりかねない不透明感のなかで、あいまいな部分を、敢えて放置したのかもしれない。

いずれにせよ、今となっては、時既に遅し。トランプ氏が、テレビ生出演で誇らしく語ったことを、翻すことなど、まずあり得ない。日本の企業業績についてのガイダンスにも今後影響は必至だ。NY市場の日本株デスクからは、あきらめに似た覚悟の雰囲気が伝わってくる。