本日の3日間価格グラフはプラチナである。1,270ドルまで急騰中だ。長らく900-1,100ドル程度のレンジで推移してきたプラチナが、上放れた。本欄で書いてきたように、筆者はプラチナに愛着があるゆえ、ハッピーなのだが、解説者役に廻り、冷静に見ると、投機主導の上げで、素直に喜べる実態ではない。

主因は中国の買いとされる。たしかに、金に比し割安感があるプラチナ・ジュエリーは一部の中国人富裕層に人気だ。しかし、このセクターの買いだけで、現在進行中の急騰を説明することは出来ない。要は、「中国買い」を錦の御旗に、短期的売買で一儲けを目論む輩が、プラチナ価格上昇を増幅させているのだ。

プロの間では、「プラチナは現物を持った者勝ち」と言われる。じっくり持っていれば、いずれ「神風」が吹いて、現物不足が生じ、リース市場には、「プラチナ現物を持っていないのに空売りを仕掛けた」連中が真っ青になって殺到。現物を持つ貸し手は、借り手の足元を見て、法外なリース・レートを吹っかけ、大儲けが出来る。今回は、「中国の買い」をプラチナ販売促進機関が吹聴したことに、阿吽の呼吸で、投機筋が乗り、買いに拍車をかけた。結果的に、ショート・スクイーズ(空売り締めあげ)のような現象が起こったわけだ。

筆者は、上海黄金交易所創設時に、アドバイザーとして招聘され、更に、中国工商銀行貴金属部の顧問役も務め、更に、中国の金鉱山も訪問しており、中国の金市場の実態は、手に取るように分かる。
日本では、プラチナの地金や宝飾品を売り戻す動きが顕在化しているが、正解だと思う。

今後の中国市場で注目されるのは、同じ貴金属でも「銀」。
中国経済が減速するなかで、個人消費が痛み、春節には「買わねばならない」金製品も単価が下がり、更に、「貧者の金」と呼ばれる「銀」で代替する傾向も強まっている。中国の銀行の貴金属部でも、売れ筋は、銀1オンスのメダルだという。
金持ちは「プラチナ」、庶民は「銀」。
勿論、「金」が主役の座は揺るがないが、貴金属セクターとしては、徐々に変化が生じているのだ。