添付グラフの赤線(一昨日)は3,240ドルから、3,150ドルまで急低下。緑線(昨日)は3,120ドルから3,240ドルまで急反発。日中の値動きが、アジア時間帯も含めて100ドル以上に達するという異常な状況だ。当然、48時間で世界の金現物需給が激変するわけではなく、ひたすら投機筋のなせる業だ。現物の裏付けがない「金」の売買が国際金価格を主導する。危うい地合いである。

まだまだ、3,000ドル以上は、値固めが必要。3,000ドルでも実需が増えるようになれば、これは、ホンモノと言えよう。金ETFも現物の裏付けがあるが、年金基金など長期保有者以外に、短期投機筋の恰好の売買ツールと化している。これは、金ETF上場に直接関与した筆者にしてみれば、想定していない展開だ。よく報道で、金ETFの残高が増えたことが、金価格上昇の理由と指摘されるが、筆者の感覚では、金売りエネルギーのマグマが市場の底流で沸々と沸き立っているイメージが浮かぶ。もちろん、金ETFが、金投資家の層を広げた功績は大きいと自負しているが。

さて、昨日の金急騰の理由は、米経済指標。
特にPPI(生産者物価指数)が前月比で0.5%低下、つまりマイナスになったことはドラマチックなことであった。09年12月以降の出来事だとされる。
更に、重要な経済指標である小売売上高が事前予測(0.3%↑)を下回った。関税導入前の駆け込み需要が限定的で、米経済の7割を占める個人消費は勢いを欠いていると米債券市場では評価された。但し、米小売り大手ウオールマートによれば、今月下旬から消費者が値上げを実感し始めるとの見解を示している。現場からの、こうした発言は説得力がある。

総じて、米経済不況回避のシナリオで急落してきたNY金に、昨日は、一定の歯止めがかかったわけだ。

今後の注目は、近々予定されているトランプ・習近平の直接対話があるのか否か。あれば、その成果が、相場には大きな影響を与えよう。具体的には中国側の非関税障壁(米企業いじめ、など)の撤廃などが議論されそう。会談がキャンセルされれば、金には上昇要因となろう。更なる歩み寄りが確認されれば、金価格には下落圧力がかかる。

まぁ、いずれにせよ、本欄の読者には、あたふたせず、じっくり金を買い増してゆくことを勧める。
様々な情報が氾濫するなかで、個人投資家にとっては、「あたふたしない」ことが難しいけどね。