円建て金価格に思わぬ円安という神風が吹いた。

昨日の日銀金融政策決定会合で、植田総裁が、追加利上げまで「ワン・ノッチ」と語ったことが、投機筋の円売りに火をつけたのだ。日銀は利上げを遅らせ、FRBは利下げを遅らせる。円安要因とドル高要因の共振だ。

しかも、日本が12月28日から1月5日まで異例の年末年始8連休に入る直前に、ドル円市場が、新たな円安段階に入ってしまった。
欧米は、12月23日から本格的クリスマスモードに入るが、26日以降は概ね休暇明けで、実質新年相場を見据えた展開になる。
特に、12月30日から1月3日までは要注意だ。

日本勢の留守を狙い、思惑による新たな円ポジションが醸成されやすい。
今回は、植田日銀総裁の「ワン・ノッチ」発言が円売りに火をつける結果になったので、日銀としても、結果的に、自らの首を絞めることになってしまった。追加利上げまで「あと一歩」という意味を込めたのだろうが、市場は、「ツー、スリー??」と勝手に拡大解釈してしまう。

対して、NY市場は、パウエルFRB議長の、利下げペース鈍化発言で、ドルインデックスが108を超え、ドル高の地合いが席捲している。
結果的に、海外投機筋は、モメンタムに乗り、ドル買い・円売り再開志向になりやすい局面だ。

対して、日本勢は、概ね、指をくわえて見守ることになる。
日本の金融当局は、仮に160円になれば、為替介入チームが、正月休み返上となるかもしれない。

「ワン・ノッチ」という表現は、さすがに英語能力の高い植田総裁の発言だけあって、海外勢にも「刺さる」。既に、ワン・ノッチ円安なる言い回しがNY市場では聞かれる。植田総裁の流暢な英語が、日銀には予期せぬ禍をもたらしたといえようか。



今日の日経に、筆者の「戦友」ともいえるジョージミリング・スタンレー氏のインタビュー記事が出ていた。
よくまとまっているので一読を勧める。
ジョージはそもそもFT記者で、金調査会社に転職。更にWGCにリクルートされた。その後、ステートストリートに転職。SPDRゴールド・シェア担当で、もっぱら調査の仕事をしている。筆者にとっては、いまどき、数少ない年上の懐かしい友達だ。