昨晩のNY時間中に、イランがイスラエルに180発とされるミサイル攻撃を実行したとのニュースが飛び込んだ。
有事の金買いで、たしかに30ドルほど、NY金は上がったが、添付24時間KITCOグラフで見られるように、乱高下を繰り返し、金の上昇幅は限定的だ。
これは、イラク戦争開戦時にも見られた現象で、「噂で買って、ニュースで売る」という投機筋の常套手段が今回も見られた、ということだ。
イラン・イスラエル戦闘状態と言うシナリオは、既に中東リスクとして意識されてきた。NYのトレーダーも、中東情勢エスカレートを予想して、既に、先物買いポジションを増やしていた。そして、予想通りの成り行きとなるや、一転、利益確定の売りに転じたのだ。地政学的リスクは日々状況が変化するので、トレーダーも短期決戦で臨むことになる。
イラク戦争開戦時には、「有事の金買い」報道に煽られ、開戦後、金を買いまくった個人投資家たちが、結局、高値掴みをする結果となった。
筆者も、常々、「有事の金は売り」「有事の金の爆買いは悪魔の選択」と書いてきたので、覚えている読者も多かろう。
今後、今回の中東情勢が、どのようにエスカレートするのか、あるいは、食い止められるのか、現状では、世界の誰も分からないことだ。
筆者の最大の注目点は、中東から日本への原油供給の最大のネックであるホルムズ海峡に、影響が及ぶか。この狭い海峡を封鎖されれば、中東産原油に80%依存する日本の経済は、たちまち、立ち行かなくなるは必至。筆者は、飛行機でホルムズ海峡を視察したことがあるが、狭い!機内で背筋がヒンヤリする体験航空であった。
なお、中東情勢緊迫は原油高を通じて米国のインフレ再燃要因となり、パウエル議長にとっては、頭の痛い問題だ。しかも、米国東海岸では、大規模な港湾ストライキが拡大の様相で、サプライチェーンに与える影響が懸念されている。それやこれやで、11月FOMCでは、インフレ再燃懸念により、利下げ見送りの可能性も出てきた。