16日朝の時点で、NY金(中心限月6月もの)は、中東地政学的リスクに反応して2,400ドルを再突破している。
12日金曜日には、やはり中東不安(イランミサイル発射前)で2,448ドルまで買われたが、そのあと、同日に2,350ドルまで100ドルも暴落していた。
そこから、2,400ドルまで這い上がってきたわけだ。しぶとい。
中東リスクも、要は、イランもイスラエルも米国も軍事衝突など望んでいないのだが、国内世論を忖度して、強硬な言動を繰り返す。
とはいえ、偶発的衝突がいつ起こっても不思議はない。
およそ、戦争は偶発的な事件がキッカケでエスカレートするものだ。
とはいえ、金市場の視点では、先週金曜日に最高値から100ドルも暴落した記憶が鮮明に残り、「うっかり手を出すと大やけどしかねない」との慎重論が根強い。
従って、中東地政学的リスクの反応としても、一進一退を繰り返しつつ、レンジの下値を繰り上げてゆく展開になっている。
15日月曜日には、金市場に強烈な逆風も吹いた。
GDPの7割を占める個人消費動向を読むうえで重要な経済指標である米小売売上高が、前月比、事前予測プラス0.4%のところ、0.7%と大きく上振れしたのだ。
これは、米国経済好調を示す「良いニュース」なのだが、FRBの利下げを期待している市場にとっては「好調な経済に利下げしたらバブルのリスクがある」ということで「利下げ後退を示す悪いニュース」となるのだ。
今や、24年FRB利下げ開始時期予測は9月まで後ずれして、回数も「多くて2回」となった。
年初は3月開始で年7回説を織り込んでいたから、これは、劇的ちゃぶ台返しだ。
金利を生まない金には、強い逆風になるはず。
しかし、中東地政学的リスクによる有事の金買いが勝り、2,400ドル台再突破となった次第だ。
それにしても、米ドル長期金利は4.6%と高く、ドル相場も世界的ドル高基調だ。
15日にはECB(欧州中央銀行)が利下げに積極的な態度を示し、ユーロ安・ドル高になったので、総合的ドルインデックスも106の大台を突破。
ドル高の流れに拍車をかけた。
ドル高・ドル金利高は、市場の法則では、金安の材料とされる。
しかし、最近は、この法則に逆らう値動きが常態化してきた。
その結果、円安とドル建て金価格上昇が同時進行して、円建て金価格が、ここまで上昇してきたのだ。
但し、為替介入があれば、147円程度まで一時的円高進行が見込まれ、円建て金価格は為替要因で下がるであろう。
とはいえ、介入効果は長続きせず、そこは買いのチャンスとなろう。
世界の為替市場の潮流がドル高に流れているとき、日本だけが、流れに逆らい、ドル売り・円買い介入しても、それは「アウェイの戦い」であり、財務省日銀に勝ち目はない。
市場に次から次に出てくるドル買い・円売りの注文をかたっぱしから、為替介入で潰してみても、結果は、モグラ叩きになるだけだ。
日銀だって財務省だって優秀な人材が集まっているゆえ、そのくらいのことは分かっているはず。
だからこそ、152円でも153円でも為替介入に踏み切れなかったわけだ。
とはいえ、今や、投機的円売りポジションが、とんでもなく積みあがっているので、そのドカ雪の自重で表層雪崩がいつ起きても不思議はない。
筆者も相場モニター画面から目が離せない。
添付の写真は昨晩「夢」に見た光景(笑)