連日の内外金価格の史上最高値更新は、金価格を長く見てきた筆者でも経験したことがない現象だ。
これまでの事例では、史上最高値更新といっても瞬間タッチで、急落に転じたものだ。
それが、今回はNY金で2,000ドル以上、国内金価格で、1万円以上という歴史的高値圏が一過性ではなく、継続している。
しかも、これが専門家泣かせの実態なのだが、最近の短期金価格変動が、これまでの「市場の常識」では説明できない。
そもそも金は「ドルの代替通貨」として位置づけられ、金利を生まないことがデメリットとされた。
それが、今回はドル高でも、金利高でも、お構いなしに買われている。
リスクオンでも買われる。
フィナンシャルタイムズもウォールストリートジャーナルも「謎の金高」と報じているほどだ。


何故か。


モメンタム・プレーヤーという市場の勢いに乗って買い進む投機家集団が、短期で買っては売りを繰り返し、ほぼ8連勝と勢いに乗っているからだ。
彼らに理屈は不要だ。メディアの取材もすべて拒否する。
自らの手口をベラベラ喋って得することはなにもない。
近年は、アルゴリズムやAIを駆使して、高速度取引で金を売買する。
最近の事例としては、3月雇用統計が発表された日(4月5日)の値動きがその典型だ。新規雇用者数が30万を超す好調な結果であったので、利下げ観測後退が鮮明になった。金利を生まない金にとって、利下げが見送られることは、高金利が続くことを意味するから、金価格は下がるはずだ。
しかし、NY金は40ドル超の急騰を演じ、2,340ドル台で引け、史上最高値を再び更新する結果となった。
このような状況下で、筆者は、短期価格変動の理由は「投機」と断じて、中期的要因が金上昇トレンドを醸成していると語っている。その要因とは、

1.公的部門である世界の中央銀行が年間生産量の1/3にあたる1,000トン以上を外貨準備として買い占めていること。
2.文化的金選好度が強い中国とインドが、高値にも関わらず、現物金購入を続けていること。この二か国の民間部門で、これまた1,000トンを優に超す需要が今年も見込まれる。
3.中東の地政学的リスクがエスカレートしていること。


この3大要因が、中期的に金価格を支えているのだ。
そのうえで、投機筋が暴れている構図である。
それゆえ、いずれ投機筋が短期買いポジションを巻き戻すときには、表層雪崩的な価格急落が起きるであろう。
しかし、上記の3つの要因が、根雪の如く効いて、金価格の下値を切り上げているのだ。
なお、円建て金価格は、為替介入があれば、急落する局面もあろう。
そこは買い時と筆者は見ている。


NY金の予測レンジは2,000~2,500ドル。


NY金は中心限月でアジア時間帯に、2,372ドルまで急騰した。
ロイター電も、特に理由がないので、困っている様子で、投機的買いと中東リスクによる買いと伝えている。
イランのイスラエルへの報復攻撃でも起きれば2,400ドルだろうね。