首題は、筆者の著作「金を通して世界を見る」の帯に使われた表現だ。
今回のNY金史上最高値更新は、金市場だけを見ていても理解できない。
井の中の蛙になってしまう。
観点を変え、金を通して世界を見れば、世界中にリスクが蔓延している。
メディアは、「今日、金価格が上がった理由は何か」という観点で報道するので、投資家の見方も短期的な視点に偏りがちだ。
しかし、投資家は短期ではなく、長期に金を保有・積立しているのだ。


問題は、NY金2,200ドル突破の直接的理由が見当たらないということではなく、中長期的には史上最高値をつけても全く不思議ではない世界政治経済情勢が続いているということだ。
例えば、ウクライナ・中東・台湾の有事リスクが、今日の金価格変動に与える要因とはならないが、中期的には、NY金上昇の大きな要因になっている。
更に、マネーの流れを見るに、米国株も日本株もバブルの様相を強め、中期的に、ヘッジの必要は高まりつつある。
たとえていえば、今の金市場を、印象派の絵を見る眼で見るべきだ。
近くで見ると、絵具の塊にしか見えないが、距離を置いてみると、モネの描いたスイレンが、浮かび上がってくる。
歴史的高値圏が中期的に続き一過性ではないことも、今回の特徴だ。
しかも、価格水準が切りあがる傾向が顕著だ。
ここが、リーマンショックやギリシャショックでNY金が暴騰したときに比し、決定的に異なる。
昨日も、NY金は反発して2,170ドル台に戻った。とにかく息が長い金価格上昇トレンドである。


さて、昨日は、日銀のETF買いによる買い支えの是非についての議論に巻き込まれた。
筆者が日経電子版コラムに書いたことがBSの経済番組で紹介されたことがキッカケだ。
その内容は以下の写真参照。

 

BSの経済番組1
BSの経済番組2

今週、日経平均が大きく下げたときに、日銀がETF買いを発動しなかったことに、市場が「梯子を外された」と失望したことに、筆者は強い違和感を覚えた。
せっかく、日本株の評価が世界で上がっているときに、金融当局の介入頼みとは、良い流れに水を差す。
特に欧米では、中央銀行の株購入は「禁じ手」とされる。
日銀が日本企業の最大級の株主になるに至っては、「もの言わぬ株主」が増えるばかりで、米年金基金は強い拒否反応を示す。
株式市場にとって年金基金マネーは最も質が高く、ヘッジファンドなど売ったり買ったりのマネーとは明確に異なる「最優良顧客」である。
もし、米国で、FRBが米国株ETF購入で株価を買い支えたら、轟々たる批判が噴出するは必至だ。
ここは、日銀がETF買い停止を明確に示すことが、重要だ。
ところが、日本の株式関係者は、「困ったときの日銀頼み」の体質が浸み込んでいる。
これでは、日本株見直しも覚束ない。


というわけで、金に株に、大忙しの日々である。