今、NY市場で話題になっているのが「モメンタムプレーヤー」集団の動きだ。
彼らは文字通り「モメンタム(市場の勢い)」を追って、市場から市場へ回遊する投機集団だ。
彼らに理屈は不要だ。相場解説者を困らせる存在でもある。
株に関しては常に強気でメディアでも積極的に発言するウォートンスクール(ビジネススクール)、ジェレミー・シーゲル教授も、8日に、「彼らとやりあうのは、鉄の神経が必要だ」と語った。
今の米国株は、彼らの草刈り場と化しており、まともに解説することは難しいと、珍しくお手上げの様子だった。
ウォートンスクールといえば、筆者がMPT(近代ポートフォリオ理論)を学んだところでもあり、そこの看板教授の発言は身に染みる。


このモメンタムプレーヤーたちが、日経平均買い攻撃が一巡したところで、金市場にも標的を向けた。
いきなり、経済指標など特に買いの材料もないときに、大型買い注文を浴びせ、NY金先物を急騰させた。
金市場では「謎の金高」と話題になった。
更に、8日金曜日の雇用統計発表後に、新たな集中的金買いで、史上最高値圏である2,200ドルを突破した。
彼らは、今週の日経平均の動きを見ても分かるように、逃げ足も速い。
目標達成後、FOMO(Fear of missing out出遅れ焦り)組が出遅れたと焦って買う過程で、売り手に回り、市場の流れに逆らわず、売り抜ける。
更に、「噂で買ってニュースで売る」という常套手段もある。


モメンタムプレーヤーの投機的売買を支えているのが、AIによる売買プログラムと、高速度取引だ。彼らのトレーディングルームに人数は少なく、相場が荒れても静かだ。トレーダーと称するスタッフの多くは、コンピューターエンジニアである。
活動拠点も、オフ・ウォールストリート。ニュージャージーなど郊外の貸しビルに陣取るグループもある。
相場は「勝てば官軍」。
専門家のコメントを冷ややかに見ている。
彼ら自ら、メディアに出ることはない。手の内を晒すことになるからだ。
筆者の知り合いは、ハーバード卒だが、父が保有していたテキサスの大牧場を売り払い、その資金でモメンタムプレーヤーになった。


NY市場では「これまでの市場の常識が通用しない」と言われるが、たしかに「過去の事例」だけを追っていると、「木を見て森を見ず」になりかねない。
今回の金急騰劇も直近で2,100ドル超えてからは実需の裏付けがなく、こうした連中に持ち上げられている面を見るに、一抹の危うさも感じる。
いっぽう、彼らが集中的金買い攻撃を続ければ、2,300ドルくらいは、一か月で到達してしまう可能性もある。
日経平均も、4万5千円程度は、彼らにとって十分に射的距離内なのだ。