会社の同僚が続々、新NISAを始めたことに焦りを感じ、自らも投資の勉強を始めた初心者たちが、突然の日本株急騰に戸惑いを感じている。
バブル後、新高値のグラフを見て、「こんな高値圏から積立を始めてもいいの?」
素朴だがもっともな疑問だ。
20年、30年計画の長期積立ゆえ、短期の乱高下に一喜一憂するな、と言われても、投資未体験者にとっては、清水の舞台から飛び降りる如き心理になりがちだ。
特に、日本人はリスク耐性が弱い。
筆者が以前勤務した機関で、投資について同じ質問表を基に主要国の特性を調べたところ、米国人と中国人が似ていて「相場がここまで上がれば、もっと上がる」と考える傾向があった。
対して、日本人は「ここまで上がると、下げそうだから、様子見に徹する」という回答が非常に多かった。
「今日買った株が、翌日下がると、頭の中が真っ白になる」という反応も目立つ。
それゆえ、今回のような日本株急騰劇に接すると、とにかく新NISA計画を延期」という決断になりがちだ。
女子会で1回3,000円払う人でも、積立投資で1回3,000円、株を買い、その株価が下がると、「えらく損した」という気分になる。
しかし、投資残高が未だ少ない段階ゆえ、未だ消化可能な心理的ショックなのだ。
熱い風呂に入るときの「かけ湯」をイメージすればよい。
投資で損するという苦い気持ちを、金銭的ダメージが最も少ない段階で体験することで、徐々にリスク耐性が強まることは間違いない。


更に、人間の欲を利用する姿勢も重要だ。
これまでニュースで聞き流していた株価変動の報道も、「なぜ?」と自分事として考え始める。
これがルーティーンになれば、しめたものだ。
今のうちに、なかなか経験できない相場劇に出会えて、ラッキーと思うべきであろう。
筆者は、年齢を問わず、資産の殆どが預金か現金という人たちを中心に、投資について語っている。
この層は、とにかく「どの株を買えばいいの。それだけ教えて」と直接的な質問を投げかけてくる。
積立といっても、計画性の心理に欠ける。
もっとも難しい層でもある。
しかし、このグループを動かさねば、新NISAが大きく育つことは覚束ない。


昨日も、今回の日本株急騰をニュースで聞きつけ、「プロなら裏技知ってるでしょう?もったいぶらずに教えてよ」と言い寄られた。
新NISAも、今後、株価が大きく変動する場面が不可避だ。
投資の知識も不可欠だが、リスクに耐える「胆力」を養成する努力も重要だ。
但し、こればかりはセミナーで教えることは出来ない。
みずから不愉快な気持ちを味わい、慣れてゆくことしか方法はない。
かくいう、筆者でも、今日買った株が明日下がれば、未だに不機嫌になる。
悟りを開くなどという心境に達するのは、凡人には不可能である。