新NISAは、長期資産形成として、とても良くできていると思う。
但し、それを利用する側のリスク耐性が、なんとも覚束ない。
NISAは、儲かれば、税制面で優遇される、つまり長期で儲かることが前提だ。
しかし、儲かる保証は全くない。
よく引き合いに出されるのが、日経平均の過去40年など長期グラフだ。
リーマンショックのときに、へこんでいるが、その後、上昇基調にある。
それは、日本経済成長を素直に映した上昇基調だったか。
読者諸兄には、その実感は希薄だと思う。
結論からいえば、アベノミクスで日銀が「異次元」量的緩和の政策のもと、無制限におカネをばらまいたからだ。
名目的株価が上がらないほうがおかしい。
問題は、これからの新NISAの期間、例えば、10年、20年、30年の間に、日銀は、この巨額のマネーばらまきをやめ、市中からマネーを回収せねばならないことだ。
これを、日銀は正常化とか出口とかいう。


しかし、おカネを入れるは易し、出すは難し。
日銀が出口に真剣に向かえば、民間の感覚としては、点滴を外される患者の如きショックを受けよう。
まず、日経平均は、日銀、本格出口に動く、の見出しだけで大暴落するであろう。
この大規模量的緩和がかかえるリスクを果たして、理解しているのか。理解したとして覚悟はできているのか。
そして、日銀がうまく危機から脱出できる方策があるのか。
私には見えない。
しかも、日銀は、日経平均が下がった日は、その日の午後2時に、買い支えに入る、救いの神の役割も演じてきた。
その結果、いまや、日銀は筆頭株主という企業が続出している。
世界的にも日銀だけのカスタマー・サービスだ。
欧米では、中央銀行の株購入は「禁じ手」とされている。


更に、心配なのは、日本人のリスク耐性の低さだ。
このブログの読者諸兄であれば問題ないが、あなたがたは、全体からみれば、ほんの数パーセント。
他の日本人の多くは、いくら長期投資と説得されて始めても、今日買った株が、明日下がると、目の前が真っ白になるのだ。
理屈で長期だからと納得しようとしても、「やっぱり投資は怖い」とすくんでしまう。
こればっかりは、セミナーで教えられるものではない。
痛い目にあってカラダの体感が拒否する。
これは民族的特性だ。
例えば、米国人や中国人は、リスク耐性が強い。
この日本で、貯蓄から投資への流れは、将来的に必須で日本経済の今後を決める大きな要件だ。
だから、NISAも冒頭に記したごとく、絶対必要なのだ。
しかし、一般メディアで、どこの手数料が安いとか高いとか、そのレベルの話に終始している。
NISAで集めたマネーを運用して長期に亘り益を出すことが、どれだけ大変なことか。
深読みすれば、政府として、その痛い点には触れず、国民にばらまいた量的緩和マネーをNISAを通じて、回収する気なのか、疑ってしまう。
結果は10年以内に露呈する。


なお、NISAのなかで金ETFを考えるとき、最も大事なことは、一万円札は無限に刷れるが、金ETFの裏付けとなっている現物の金は絶対に刷れない独自の希少価値を持つことだ。
心の中では、単なるペーパー資産とゴールドを別枠として考えるべきであろう。
年末年始に頭を冷やして考えてみて欲しい。