昨日の続編である。
昨晩は、グールズビー・シカゴ連銀総裁が、米国CNBCに生出演して語った。
いわく「FOMCは利下げを討論する場ではない。
参加者たちが、金融市場関連のデータに基づき、個人的金利予測をドットチャートに書き込み、今回の会合で利上げするか否かを投票で決める場だ。市場は先取りして24年に1.25%も利下げすると織り込んでいるようだが、そもそも、市場は自分たちに都合の良い部分だけを抜き出して囃したてる傾向がある。」
メスター・クリーブランド連銀総裁も、FTとのインタビューで、昨日記したウイリアムズNY連銀総裁の発言と同様の趣旨を述べた。
先走りする市場に強烈なパンチを浴びせたかたちだが、市場側も、めげず、インフレが明らかに終息に向かっているなかで、24年は利下げの年となる、との見方を変えていない。
ドル建て金価格は、既に、NY市場がクリスマスモードで、取引も薄い時期なので、大きくは動かない。
それでも、FRB内部の亀裂が露見したことや、FRB対市場の対決の構図は変わらず、来年に持ち越されよう。


なお、本日は、日銀金融政策決定会合の日。
今回、NY市場も、なぜ日銀に注目するのか。以下に纏めた。


日銀が仮にマイナス金利解除に動いても、0.1%利上げ程度の効果に過ぎない。
対して、FRBに関しては、24年に1.25%程度の利下げの可能性を市場が先取りして動いている。
10bp対125bpのインパクトの差は大きい。
そもそも「マイナス金利」は「絶滅危惧種」と揶揄されるほどで、普段日銀に注目していないNY市場の人たちの間では「まだ極東で生息していたのか」と改めて驚きの声さえあがる。
日本株デスクなどの親日派を除き、ウォール街一般の日銀の認知度は、その程度のレベルだ。
それでも、NY市場が今回の金融決定政策会合に注目するのは、日本市場の金利なき世界が正常化に動けば、日本の大手機関投資家が保有米国債を売り処分する、所謂「レパトリ」を誘発するからだ。
ヘッジコストが高いので、既に、レパトリは現実化しており、米10年債利回りが一時5%を突破したときは、米国債格下げ懸念とともに「ジャパンファクター」が金利上昇要因として語られた。
時間外の日本時間帯での米国債先物取引の動きが、当日のNY債券市場に直接的影響を与えることも珍しくない。


マクロ視点では、FRBがQTを通じて、米国債保有を減らすなかで、国別米国債保有(除く米国)ランキングでは、日本が中国を抜き、世界最大となった。
23年9月時点での国別米国債保有額は、日本が1兆877億ドルで、二位の中国7,781億ドルを大きく引き離している。
とはいえ、同8月時点では1兆1,162億ドルであったので、日本勢の米国債売却は既に進行している。
それでも、米国債市場の流動性は圧倒的に大きく、いつでも売り手と買い手がいることは、魅力だ。
地政学的リスクが顕在化すとマネーが「質への逃避」で安全資産としての米国債に流れると言われるが、筆者に言わせれば、「流動性への逃避」だ。
911NY同時テロ事件の直後、まっさきに復旧して売買を再開したのが米国債市場であった。
リーマンショックのときには、売り逃げたくても買い手がつかず、生殺しの如き経験を味わった当時のトレーダーは、未だに、売りたいときに買い手がいる有難みを肌で感じている。
更に、米国債の3%を超す利回りも魅力的だ。
それゆえ、長期的には米国債が外貨準備などで購入・保有される傾向は変わらないであろう。
日本の米国債保有額も、日銀の金融正常化が後手にまわるようであれば、再び増える可能性もあろう。
イエレン財務長官の立場では、日本は大事なお客様なはずだ。
円安進行時に、日本の為替介入を容認したのも、カスタマーサービスとして当然のこと。
日本を為替監視国に指定するなど互恵の論理からしても論外と筆者はNY市場の知人たちに説いている。


なお、明日20日、BSテレ東の日経ニュースプラス9にスタジオ出演して、日銀会合について語る予定。
出番は午後9時半くらい。