週前半に大荒れした金市場も、スポットで2,020ドル台、NY先物2月限で2,040ドル台のあたりで一服している。
昨日は、米JOLTS(求人件数)が、前回の935万件から、873万件に大幅減少したことで、労働市場の過熱感が薄れつつある印象を与えた。
利下げを後押しする結果でもあり、金には追い風となった。
しかし、同時に発表された重要指標であるISM非製造業景況感指数が、前回の51.8から52.7に上昇した。
50が好景気と不景気の境とされるので、サービス業が好転していることを示す。
これは、追加利上げの可能性を示唆するので、金には逆風となる。
かくして、金にとって買い材料と売り材料が同時に出て、その影響が相殺された。
その後、利益確定売りが出て、下げに転じた。史上最高値圏ともなれば、これまで金を買ったひとは、皆儲かっているわけで、潜在的利益確定売りの圧力は強い。
いっぽう、売られて安値になれば、新規に買いたいという人も多い。
利益確定で売って儲けた人は、成功体験により、下がれば、金市場に再参入するケースが珍しくない。
結局、売り人あれば、買う人ありで、2,000ドル超のレンジが支えられている。
昨日も、後半には買い直され、結局、価格水準に大きな変化はなかった。
金価格高止まりである。
なお、今週は、雇用統計が控えるので、そこで、大きな動きが出そうだ。
これまでどおり月間新規就労者数が20万~30万人に達すれば、労働市場過熱感が強まり、利下げの可能性は遠のき、金は下がる。
逆に10万人を割り込むようなことがあれば、引き締めが効いているという解釈となり、利下げへの転換の可能性が強まる。


総じて、現状では、来年の利下げに関して、市場の先走り傾向が顕著だ。
FED WATCHによれば、来年5月までに利下げの可能性が、なんと9割に近づいた。
極端な事例としては、来年1月にも利下げを見込む確率が10%ほどまで増えている。
パウエル議長にしてみれば、そんなことを言った覚えはないと、心外であろう。
市場側が明らかに前のめり気味に先走っている。市場対FRB。
どちらが正しいのか。
筆者は、慎重なFRBのほうが正しいと見ているが。
すべては、今後のデータ次第。
具体的には、筆者は、来年の利下げ時期を、7~9月期と見ている。
FRBの悪夢は、利下げした後で、株価が急騰して、個人投資家が儲かり、個人消費が過熱して(資産効果)、インフレが再燃。
結局、再利上げによる火消に追い込まれるというシナリオだ。
そうなれば、FRBへの信頼は失墜するので、容易に利下げは決断できない。
個人が、物価はいつ急騰するか分からないと思うかぎり、インフレの根は残るのだ。
それゆえ、金価格は、利下げを受けて、急騰後、再利上げで急落という展開も、ワイルドカードとして意識しておく必要があろう。
中長期で金は上昇トレンドとはいえ、一直線で上がり続けるほど簡単なことではない、ということを言いたいのだ。
だからこそ、金ETFも短期売買ではなく、長期目線で、こつこつ地味に積み立てる感覚で買い増してゆくことを、長らく推奨しているのだ。
金未体験者でも、今からでも、遅くはない。