今回の金高値は中東発有事の金買いということになっている。
確かに、混迷・迷走する中東情勢が、金価格の下支えになっていることは間違いない。
しかし、2,000ドルを突破して、更に、上をうかがうとなると、「金融政策不信を映す金買い」という面がより強くなる。
そもそも金利は、一年365日、市場にジワリ効く。
特に、FRBが引き締めから緩和に転じるとき、そして、これは下げ材料だが、日銀が異次元の量的緩和からの出口に動くとき。
FRBが、「利下げ」に転換するときは、金利を生まない金には大きな追い風となる。
対して、いつのことか分からぬが、日銀が量的緩和を終了するときは、円高を通じて、円建て金価格の下げ要因となろう。
円建て金価格は、今年の場合、NY金価格と国内金価格が同時に上げて、史上最高値を更新した。
しかし、そんな都合の良い話は、いつまでも続くことではない。
局面が変われば、NYドル建て金価格が下げ、円高で国内金価格も下げるという可能性もいずれ来ると思う。
そういう意味で、今年は、日本人の金保有者にとって、都合の良い年であった。
筆者は、2025年くらいが、円建て金価格にとっては、要注意かと思っている。
これは中期的な視点での話だ。
長期的視点にたてば円安基調は変わらず(これは日本経済にとっては、有難くない話だが)、国際金価格は供給面でピークアウトしてくるので、更に上昇すると見ている。
おそらく、中国の公的金保有が、現在の2,000トン程度から5,000トン程度に増えているであろう。
なお、供給面では、二次的供給源(リサイクル)が増え、一次的供給源が減る傾向だ。
ただし、アフリカ諸国の金生産が急増しつつあることは、ワイルド・カードとして要注意である。
それから海底金鉱脈開発の話も話題性があるが、なにせ金は固体なので、液体の原油のように海底から噴出してくれることはない。
需給面からみれば、長期的な金の需給均衡点は、3,000ドル程度となろうか。