イラク戦争が勃発したとき、金価格は、上昇後、「吹き値売り」に見舞われ、結局下落した。
プロの手口は、「噂で買って、ニュースで売る」。
特に、「火薬庫」と言われる中東発の地政学的リスクは陳腐化も早い。
今回の中東情勢急変では、ハマスによる突然の市街戦勃発という劇的な展開で、金価格も週明け月曜朝のアジア時間帯に、いきなり20ドル超の急騰を演じ、その後もNY時間で続騰。
スポットで1,860ドル超をつけている(KITCOグラフ緑線)。
地合いとしては、先週までは下げ続け、1,800ドルという下値抵抗線の攻防戦を繰り広げていたが、雇用統計発表後に、空売りの買戻しにより、反騰モードにはあった。(KITCOグラフ 青線)
(先週金曜日に発表された雇用統計は、新規雇用者数30万人超えと、事前予想の18万人程度を大きく上回った。
これを受けて、FRBは労働市場過熱を冷やすため追加利上げを決行するとの解釈が優勢になり、金は売られ1,800ドル割れか、と思いきや、国際金価格は反騰したのだ。
結局、金市場は、1,900ドル台から、あれだけ売られて、oversold売り超過の状態にあり、空売り投機筋の買戻しが起きたわけだ。
さすがに1,800ドルを割れば、下げすぎの割安感が出ると思ったのであろう。)
結局、1,800ドルで底入れした形になっている。
但し、有事の金買いで上昇した部分は、最悪のシナリオに発展しない限り、早晩、剥落する可能性が強い。
背後の火付け役とされるイランと、イスラエルが全面戦争となり、サウジアラビアも巻き込む事態に発展すれば「最悪」となるが、現段階では、そこまで読み切れない。
結局、金市場へ持続的影響を与えるのは、やはり、FRBの金融政策と、米議会混乱で露わになった米財政不安だ。
来年の利下げへのピボット(転換)や、米国債格下げによる米ドルへの信認低下。
その結果、世界の中央銀行が、外貨準備のドルを減らし、公的金保有量を増加させている傾向は一過性とは言い難い。
連日、報道されるガザの衝撃的映像は悲劇的であり、イスラエル・パレスチナ問題に大きな禍根を残すことは間違いなかろう。
ただ、マーケットには、実質金利のような金融要因がジワリ、ボディーブローの如く効いてくるのだ。