3日日本時間午後11時のことだった。
注目のJOLTS(求人件数)の発表。
961万件と事前予測880万件から上振れした。米労働市場の強さを見せつける如き結果にNY市場は動揺した。
11月追加利上げの有力な根拠の一つになり得る。
米債券市場では10年債利回りが4.7%台から4.75%台へ跳ね、その後も、更に5bpほど続騰した。
同時に外為市場では、瞬時に150円を突破した。
しかし、次の瞬間、相場モニターは148円台をつけていた。
明らかに、ドル金利高=ドル高の市場の法則に反する値動きだ。
価格グラフを見れば、午後11時に150円台から148円台まで、崖から落ちる如き様相だ。
多くの市場関係者は、すわ、いよいよ為替介入か、と色めきだった。筆者も例外ではなかった。
しかし、その後、円相場は、細かな動きはあるものの、おおむね148-9円のレンジで推移した。
「利益確定の円買い・ドル売りか」
「いやいや、日本の財務省と日銀の足跡だらけだ」
「いわゆるスムージング・オペレーションであろう。円安のスピードにブレーキをかける程度で、力づくで140円まだ持ってゆこうという意図は感じられない」
「米国債が一気に10bpも急騰するなかで、誰がドルを売るか」
市場の意見は割れる。


ただ、注目すべきは、148円台で、NY市場では、「円安の波に乗り損なった出遅れ組」が円を売った痕跡が、明らかなことだ。
為替介入などで円上昇を待っている人たちが未だ相当数残っていたことが、はからずも露わになった。
なにせ、2007年以来のドル金利急騰の大波に、日本の金融当局だけが逆らっても勝ち目は薄い。
それを一番分かっているのは、日銀現役の諸兄であろう。
今回は、求人件数であったが、今月は、雇用統計、消費者物価指数、雇用コスト指数など重要指標が目白押しだ。
そのたびに、150円攻防戦になるのか。すべてはデータ次第。
10月は155円を目指す動きになるのか。
あるいは、本格為替介入で140円までの円高に振れるのか。
それにしても、日本金融当局も、為替介入をやるならば、NY市場でアウェイのゲームを強いられる。
つわものたちが、「いざ、お手向かい致す」とばかり控えている。
昨年の為替介入より、はるかに難しい市場環境といえる。
日銀が新総裁を迎えても、金融政策の選択肢が、限定的だ。
日本では大事でも、0.75%刻み利上げ4連発など荒業を繰り出してきたFRBと比較すれば、YCCをいじる程度で小粒と言わざるを得ない。
だからこそ、日本の為替介入を、新規参入の機会を狙っている輩が少なくないのだ。
まず、11月FOMCまでは、NY主導の円相場形成が続きそうである。