ドル金利の上昇に歯止めがかからない。
米10年債利回りは4.5%の大台を突破。2007年以来の高水準だ。
米2年債利回りも5%を大きく上抜けている。
FRBが発してきた「政策金利は、高く、長く」とのメッセージを市場は半信半疑で受け止めていたが、9月FOMC参加者の金利予測でFRBの本気度を思い知ることになった。
利上げ停止後は、早期に緩和へ転換するとの予測も崩れた。
更に、念を押す如きFRB高官発言も相次いだ。グールズビー・シカゴ地区連銀総裁は「引き締め過ぎのリスクより、インフレ悪化のリスクを注視」と語った。
引き締めの副作用としての不況を懸念する発言で「ハト派」と位置付けられていた人物の「転向」はサプライズであった。
更に、グールズビー氏とともに2023年FOMCで投票権を持つボストン地区連銀総裁コリンズ氏も「11回の利上げと8,000億ドルの量的引き締めの影響が出るのに、想定より時間がかかっている。消費者も企業も保有キャッシュが潤沢なのだ。」と語った。
同じく投票権を持つボウマンFRB理事は、より直接的に、「2%のインフレ目標への進捗状況は不十分だ」と言い切った。


総じて、米国経済の想定を超える力強さが「誤算」である。原油急騰も全米に拡大するストライキも、想定外であった。
更に、2024年は、名目では利下げ2回が予測されているが、実質金利では、利上げとなることも、市場には、ずっしり効いている。
更に、政府機関閉鎖の可能性が極めて強くなったことで、米国債格付けをトリプルAに据え置いていた格付けムーディーズも、米国債を格下げ前段階の「クレジットネガティブ」とした。
他の大手格付け会社S&Pとフィッチが米国債格下げを決めたが、ムーディーズは同調せず、その動きが注目されていた。
米国債を見切る投資家行動が世界に拡散すれば、ドル金利上昇は加速する。
今や、ギリシャに10年おカネを貸すほうが金利は安いことになる。
勿論、ダントツの流動性を持つ米国債と単純比較はできない。
とはいえ、この珍現象も、逆イールドの変異種ということか。


国際金価格が、これだけのドル金利高でも、1,900ドルを割り込まないのは、安全資産とされる米国債への信認が低下しているからであろう。