金の世界に身を置いて半世紀、まさか、この日が来ようとは思わなかった。
税込みとはいえ、金現物1グラムの販売価格が1万円超えるとは。
もちろん円安要因が強いが、ドル建て金価格も、歴史的FRB利上げという逆風にもかかわらず、1,900ドル台の歴史的高値圏にとどまっていることも重要だ。
ドル金利高により外為市場では当然ドル高(円安)傾向が強い。
しかし、ドル高ならNY金安というのが、これまでの市況の法則であった。
金はドルの代替通貨とされるからだ。
しかるに、今回は、ドル高でもドル建て金高という現象が昨年来、続いている。なぜか。
外為市場では金利差でドル高なれど、中長期的に金現物を保有する長期投資家、中央銀行、年金基金などは、ドルへの信認が薄れていることを懸念している。
ドル高ドル安は、当日のヘッジファンドなど投機筋のドル売買で決まる面が強いが、ドル不安は、構造的な問題だ。
日々のドル安ドル高とは異次元の世界である。
ドル高なれどドル不安。
このポイントが重要だ。
ゆえに、金1グラム1万円は、決して、単なる偶然ではない。
根は深い。
金を買うことは米ドルへ不信任票を投じることにもなるのだ。
それゆえ、日本政府・日銀は、外貨準備としてドルを減らし、金を増やす世界的傾向から距離を置く。
米国への配慮・忖度とでもいえようか。
中国が外貨準備の中の米国債を減らし、無国籍通貨=金を増やしていることとの対比が鮮明だ。
さて、金1万円で売りか買いか。
金の長期保有者で、当面、現金のニーズがなければ、買い持ち。
コツコツ積立感覚で買い増すも良し。
住宅購入や教育費など特に出費が必要なら売って、支払いに充てればよい。
夫がリストラでクビになったとか、家庭内有事に直面していれば、まさに「有事」に際し金を売って凌ぐという、金本来のヘッジという役割を果たしてもらうことになろう。
なお、本日、朝日新聞朝刊5面に、筆者の金に関する寄稿文が掲載されている。