中国の金生産量は世界一といえど年に300トン強。
豊富な埋蔵量があるのに、あえて採掘を一定量に抑制して、国内の希少資源温存を優先させている。
そのかわり、習近平自らアフリカ諸国に赴き、現地の金などの資源開発に関与して、直接輸入を増やす動きを見せる。
ここでも、チャイナマネーがばらまかれてる。輸出入決済は人民元というケースが多い。
いっぽう中国国内の金生産といえば、山東省が、まず思い浮かぶ。
招遠市は、市の中心部入り口近くに「金都」という看板が建てられるほど、金に特化した市だ。
コロナ前には、招遠黄金祭りが開催されていた。
「黄金文化にさらなる発展と黄金の都のブランド力向上」がテーマであった。
「招遠市が持つ悠久の黄金文化と濃厚な郷土文化の融合」を目指している。
単に、金採掘だけではなく、できる限り、現地にカネが落ちるように、金宝飾品などの加工産業養成にも力を入れる。
さらに、大きな宝飾店もあり、流通の末端である小売にまで参入している。
筆者が、たまたま、招遠市から青島空港までバスに乗ったとき、イタリアンブランドのスーツを着こなしたカッコいい御兄さんたちの一団と一緒になったことがある。
イタリア出張で、最新の宝飾デザイン・トレンドを学び、且つ、イタリアの企業と共同子会社を創設するとの話であった。
しかし、イタリア側では、中国人が嫌われている。
宝飾展示会で、ブースに展示されている新製品の写真を撮ってデザインを「盗む」ことが常態化していたからだ。
それゆえ、筆者も中国人と間違われると、追い払われたこともあった。
いまだに、中国人を敬遠する傾向は変わらないが、チャイナマネーの威力は無視できないというのが本音。
EUのなかでも、イタリアは特に親中国系が多く、政治的にも中国寄りの姿勢が目立つ。
話を中国の金生産に戻すと、中国は、とにかく、金をなんらかの形で国境内に置いておけば、いざというときに、全体主義国家ゆえ、召し上げればよいという発想を感じる。
国民には金製品を持たせる。
国内の金鉱山はそこそこ金を生産してくれればよい。
国境内の金埋蔵量を減らしたくはない。
そもそも国民は人民元紙幣を信ぜず、金製品は大好きというお国柄だ。
中国最大の銀行(今や世界最大の銀行)である中国工商銀行も、17世紀上海の金銀両替商が原点であった。
やはり、中国には金の「フランチャイズ」があるのだ。
その点、日本はといえば、宝飾品の世界でフランチャイズがあるのは、やはり真珠であろう。
歴史的に秀吉の黄金の茶室とか、金閣寺もあるが、金色より銀色を好む傾向もあった。
JRに乗っていて、対面の女性が大振りの金ネックレスやバングルをつけていると、それとなく中国系と知れたりする。
日本人女性は一般論だが、小ぶりでプリティーなゴールドジュエリーやプラチナを選好する傾向がある。
ただし、世代別には、ゴールド系のジェネレーションもいる。
いろいろあって、興味深い。
添付写真は、中国工商銀行上海支店(といっても高層ビルだが)のなかに再現されていた17世紀創業時の支店風景(蝋人形館になっていた)。
GOLD AND SILVER MONEY EXCHANGEという英文の看板が分かりやすい。
中国の金はおカネでもあり、宝飾などの素材でもあり、スマホ製造には欠かせないハイテク用素材でもあるのだ。
それゆえ、国内備蓄を常に優先させる。数千年続いた金文化は変わるまい。