先週金曜日発表された注目の5月雇用統計は、新規就労者数が30万人を超え、更に前月分も上方修正された。
これだけ利上げを続けても、新規雇用が増え続けるということは、まだ金融引き締めが手ぬるい。
もっと利上げすべし、との議論が熱を帯び、金価格には逆風になったのだ。
とはいえ、失業率は3.4%から3.7%に上昇している。
パウエルFRB議長は、かねてから、失業率が良すぎる、4.5%程度まで悪化してもらわないと、物価の過熱状況は収束しないと述べてきた。
その意味では、金融引き締め効果がやっと出始めたとの解釈も成り立つ。
かくして、雇用統計の内容は、まだら模様なので、6月FOMCでは利上げを見送り、これまでの金融政策の効果を点検する。
そのうえで、必要とあらば7月FOMCで利上げ再開する、との説が浮上しているわけだ。


これに対する金市場の反応だが、これまで利上げは打ち止めの可能性が強く、年後半は利下げもありうるとの予測を織り込み上がってきた。
その前提が、雇用統計で不透明になってきたことで、2,000ドル台回復を見込んだ投機的金買いポジションが、一斉に売り手仕舞いされたわけだ。
(KITCOグラフ、赤線緑線参照)。

 

kitco

しかし、利上げ最終局面にあることは変わりない。したがって、NY金は下げても底は浅い。
先週金曜日の日本時間帯ではNY金先物価格(スポット価格ではない)が瞬間的に2,000ドルを突破する局面もあった。
総じて、1,900ドル台で下値を試したが、結局、1,800ドル台にまでは下げ切らず、市場の目線は再び2,000ドル方向に向いているわけだ。
米国の銀行危機もまだ生々しい。米国財政赤字は債務上限が妥結したとはいえ、累積債務は30兆ドルという途方もない高水準にある。
借金も、ここまで膨らむと、借りたもの勝ちのごとき様相だ。米国の借金証文である米国債が今はトリプルAの最上ランクだが、既に格付け機関は、格下げの可能性ありと警告を発している。
思い起こせば、リーマンショックのときも、米国債格下げがキッカケで、当時史上初の金価格4桁=1,000ドル突破となり、注目されたものだ。
なお、円相場は、米利上げ継続が示唆されると、ドル高・円安の動きは加速する。
ただし、140円を大きく超えると、財務省日銀の市場介入の可能性が強い。


なお、YouTube機材の不調で、週末の豊島逸夫チャンネル・雇用統計ライブ配信できず。
復調したので、今週、ライブ配信の予定。
ちょっと更新間隔が空いたからね。


さて、これから外国出張の機会が増えるのだが、中国の北京で病院4時間待ちというほどコロナ再発しているので、同じ飛行機に中国人団体でも乗り合わせて、10時間も機内で一緒にいたら嫌だな、という感じだよ。
日本のインバウンドには貢献しているが、複雑な気持ちの人たちも多かろう。