米国債と金は安全資産の代表格とされる。
しかし、今回ばかりは、米国債に債務不履行リスクがつきまとう。
ウオール街では、今こそ金推奨の声が頻繁に聞こえてくる。
しかし、NY金価格は2,000ドルを突破して、一時は史上最高値に接近したものの、その後、下げに転じ、1,900ドル台半ばで推移している。結果的に米債務上限リスクがいよいよこれからピークというときに、金価格は下げたのだ。債務上限妥結ともなれば、更に下押しの可能性もある。


NY金市場は、米債務上限問題を囃したいところだが、所詮、瀬戸際で最悪の事態は回避されることを読み切っている。既に、米財政不安をテコに史上最高値更新寸前まで4回迫ったが、結局、跳ね返された経緯もある。


なお、NY金価格下落の背景として米金融政策も重要である。
そもそも金は金利を生まないので、利上げは天敵だ。そこでFOMCによる「利上げ打ち止め」観測を織り込んで買われたものの、ここにきて前提が崩れたことで、見切り売りが出た。
具体的には、利上げを6月は「一回休み」にするが、遅行するこれまでの利上げ効果を点検のうえ、必要なら7月に利上げ再開のシナリオがFRB高官発言で語られたことが効いている。ターミナル・レートも6%の可能性が言及され始めた。万が一、そうなれば、円安150円のシナリオにもなる可能性をも秘める。


とはいえ、足元のNY金価格は、1,900ドル台半ばで底入れの兆しも見える。
政策金利上昇・地銀規制強化の副作用である米国商業用不動産ローンの不良債権化リスクにより、次の地銀破綻の可能性がちらつくからだ。
既に、オフィスビルの空室率は、サンフランシスコ、ロサンジェルス、シカゴで2割を超え、マンハッタン、ワシントンは2割に接近中だ。ゼロ金利時代に地銀融資で建設されたオフィスビルが、次回、借り換えの時期には、金利が5%を超え、しかも、テナント需要はコロナ前の水準には戻ってこない。
商業用不動産ローンの市場規模は2.9兆ドルと過去10年で2倍に拡大しているので、サブプライム並みの損失の火種になりかねない。
ワシントンの派手な共和党、民主党の「プロレスごっこ」より、商業用不動産リスクのほうが、「要経過観察」である。