米地銀ファースト・リパブリック・バンクは預金の4割が流出していた。
他の地銀に比し、桁違いのマネー流出だ。
株価も一昨日が49%安、昨日は30%安。
大荒れ相場を冷やすため、NY証券取引所は昨日、日中に10回も同銀行株取引一時停止したほど。
政府は救済を当てにするなと発言。民間大手銀行の支援にすがるか。
しかし、話は容易にまとまらず、先が見えない。
国際金価格は引き続き2,000ドル攻防。
強い売りも浴びているのだが、歴史的高値圏を維持しているのは、銀行不安第二波が要因。
昨日述べた米財政不安も効いている。
更に、5月3日のFOMCが注目材料だ。
(以下は中級編)
FRBパウエル議長にとっては、5月FOMC直前という、なんとも間が悪いタイミングで、ファースト・リパブリック・バンク危機が表面化した。
事前想定通りに利上げを決定すれば、市場の安定よりインフレ重視かとの誹りを受けかねない。
かといって市場の危機感を鎮めるために、今回利上げを見送れば、FRBは我々が知らない何かを把握しているのではないかと、市場が疑心暗鬼を募らせる可能性がある。
更に、ウォール街が危惧するのは、金融不安が地銀に限定されるか、という問題だ。
叩けば埃が出るリスクを欧州市場で予告編の如く見せつけられたきたからだ。
まず昨年、財政不安に端を発する英国債投げ売りが生じたとき、英国年金基金がデリバティブにレバレッジをかけて投資していたことが発覚。
更に、クレディ・スイスが英金融会社グリーンシル・キャピタル経由でサプライチェーン・ファイナンスという新商法に出資して巨額の損失を計上したことが、結局、同銀行の命取りの一つとなった件。
一般的にプライベート・キャピタルといわれる金融会社は、銀行ライセンスを持たず、金融規制も相対的に緩い。
プライベート・キャピタルの顧客投資家は数年単位で出資するので、「預金取り付け騒動」は起きない。
最終的投資先はサプライチェーン・ファイナンスの如き、リスキーな分野に及びがちだ。
ゼロ金利時代には、画期的新ビジネスともてはやされたが、金利上昇とともに化けの皮が剥がれる事例が未だ市場のどこかに埋もれているやもしれぬ。
疑心暗鬼になりやすい地合いといえる。
今回の米国銀行不安は、破綻という第一波から、その後遺症ともいえるクレジット・クランチ(信用収縮)という第二波に移行しつつある。
市場の流動性が縮小すると、バフェット氏の名言のとおり「誰が裸で泳いでいたか露わになる」ことになる。
現時点では、FRBも含め金融監督部門が、その「誰か」を正確には特定出来ていない。
リスクが見えない状況は市場が最も嫌うところだ。
このような市場環境で、FOMCでは利上げが議論される。
恒例の記者会見では、金融不安と利上げの関連について、質問が集中しそうだ。
最近は「即興の達人」と揶揄されるパウエル氏の受け答えが、思わぬ市場の反応を誘発するリスクには要注意だ。