長期的に金価格が右肩上がりと筆者が自信を持って言えるのは、供給サイドで、一次的供給源の鉱山会社から、新規の開発案件が殆ど出てこないからだ。
勿論、まだ埋蔵量はあるのだが、陸上なら自然環境が厳しくインフラ整備だけでも膨大なコストがかかる。
海底には豊富な金鉱脈がいくらでもあるが、液体の原油と異なり、固体ゆえ噴出してくれない。
しかも、金鉱石1トンから抽出される純金たるや1グラムもあれば、御の字だ。
それゆえ、現存の金鉱山会社は、良い鉱脈を持っているライバル企業の買収で「飯のタネ」を掴もうとする。
合従連衡は金生産者の間で日常茶飯事だ。
しかし、これは、共食いであり、世界の金生産量は増えない。


残るは二次的供給源といわれるリサイクルだ。
それゆえ、日本でも近年は、地方にリサイクルセンターを建設するプロジェクトが目立つ。
還流してくる金は、高値圏での売り戻しで急増する傾向がある。
それゆえ、二次的供給源からの供給量が増えると、相場の頭を打つ傾向がある。
これも、腐食しない金ならではの特徴だ。
但し、最近は、世界の将来がリスクだらけ、という状況で、歴史的高値圏でも売らず、逆に買い増す動きも増えている。
これは、一昔前では考えられなかった現象だ。


さて、足元では、金鉱山会社世界1位のニューモント(米)と7位のニュークレスト(豪)の合併が進行中で話題になっている。
双方の株主の利益も絡むので交渉は長引いているが、サバイバル合戦でもあり、最終的には両社とも締結を目指す。
なお、世界の国別金生産量も、世界各地に分散傾向が加速している。
1970年代には南アが世界の生産量の7割以上を占めたが、その南アの金生産量たるや、今や、同じアフリカのガーナをも下回る。
世界の年間金生産量は、最近の3,500トン前後で、長期的に頭打ちだ。
主な生産国は、中国、ロシア、オーストラリアで年間300トン台。
世界一は中国。
米国は200トンを割り込み193トン。
あとは100トン台で、インドネシア、ウズベキスタン、ペルー、メキシコ、カナダ、ガーナ、南アが並ぶ。
中小金生産国の数は、爆発的に増えた。
金高値圏が続いているので、世界各地で新たな金鉱脈が開発されたということだ。
しかし、総量はピークアウトしている。


さて、NY金のほうは、今日から重要な経済指標や発表が相次ぐ。
12日はCPI!
13日はPPIと3月FOMC議事要旨。
14日は米小売売上高。
FRB高官発言では、シカゴ地区連銀総裁が、利上げ慎重論を唱えるなど、FRB内部に亀裂が目立ち始めた。
これは波乱要因だ。