16日日本時間午後10時15分。
ECBラガルド総裁「利上げ0.5%」の一言で市場の潮目が変わった。
第一報は大西洋を渡り、NY市場に瞬間的に伝播。
特に最近値動きが激しい債券市場が今回も強く反応した。
2年債利回りは、ECBラガルド総裁による発表前に、0.25%予測が強く、4.0%台から3.8%台へ急落していた。
しかし、利上げ幅0.5%と発表されるや、瞬時に反騰を開始。2時間後には4.2%台に乗せた。
24時間グラフで見ると、ECB発表直前を下値にV字型の形状になる。
この事例は極めて示唆的だ。


まず、数時間単位で20bp近く変動することが常態化している。
2年債の直近の流れを見ても8日のパウエルFRB議長の議会証言の後には、5%を超えていたので、短期間で100bp以上、急落したことになる。異常だ。
これは、米国債市場でオファーとビッドの差が広がり、なかなか売買が成立しない状況を映す。
世界で断トツの流動性を誇る米債券市場は、911同時多発テロのときも、真っ先に売買を再開した。
それが、今回は、市場参加者が、信用不安に起因する恐怖感で委縮している。
更に、ここぞとばかり、超短期売買を繰り返すCTA(コモディティ・トレーディング・アドバイザー)が格好の草刈り場と見て暴れている。
更に投資商品として売買されるフェデラルファンド(FF)金利先物の値も乱高下している。この投資商品の価格動向が、「市場の政策金利予測値」として引き合いに出される。直近では、ターミナルレート予測値が、SVB破綻前の5%台半ばから、ほぼ1%下がり、4%台後半に落ちてきた。
短期に1%相当の下げは「暴落」といえる。
これが、年内利上げから利下げへ転換観測の根拠になっている。


しかし、投機筋の売買で形成されるFF先物金利を、金融政策金利に関する議論で、そのまま引用してよいものだろうか。
あくまで、参考数値として見るべきであろう。
今は、3月FOMC直前のブラックアウト期間なので、FOMC参加者の見解は一切伝わってこない。
その間、市場は先走り、年内利下げ観測が強まったとされる。
しかし、前回のFOMCでも、市場とFRBの見解の差が話題になったが、結局、市場側が屈する結果となっている。
ECB0.5%利上げ強行も、市場にとっては、サプライズであった。
果たして、3月FOMCでは、パウエル議長が、ラガルド氏と同じく、インフレ抑制を重視して利上げを見送らず、強行するのか。
市場予測では0.25%予測が70%を超え、利上げ見送りが30%未満となっているが、日々、クルクル変わっている。
クレディ・スイス問題浮上の時点では、利上げ見送り予測が6割以上に達していた。
筆者は、市場の予測を気配値程度に見ている。
なお、量的緩和再開説も流れるが、これには、昨年の英国年金による英国債投げ売りのときに、イングランド銀行が、時限措置として、英国債を買い受け、「量的緩和再開」と囃された事例の連想も働いている。量的引き締め(QT)減額はあり得るが、量的緩和(QE)再開のような劇的政策変更となると、新たに大きな信用不安勃発が前提となろう。


金市場の視点では、来週のFOMCで、パウエル議長が、年内利下げや量的緩和再開を否定しなければ、これは、NY金が2,000ドルを突破するキッカケとなろう。
足元では、今日も、円建て現物小売価格が最高値更新。
高止まり傾向。
なお、今朝、テレ朝「グッド!モーニング」で、クレディスイス問題について話した。

 

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明日土曜日朝9時に、今週振り返り、来週FOMC見据えるYouTubeライブ配信予定。
時刻に変更あれば、Twitter @jefftoshimaで告知します。