14日に2月CPIが発表になった。ヘッドライン年率6%、コア5.5%。
NY金は、KITOグラフ緑線の如く1,900ドル線上で行ったり来たり。
為替は円安に振れ、円建て金小売現物店頭価格は50円上がり9,100円。
金ETF価格も最高値水準を維持。
CPIで、筆者の注目は、パウエルFRB議長が最も注目している「住居費を除くサービス業」の価格動向であった。
徹底的に最も頑固な労働集約的サービス産業に絞り込んだ指標なので、市場ではスーパーコアとも呼ばれる。
パウエル氏は、7日の上院議会証言の冒頭で、消費者支出の半分以上を占めるスーパーコアに、ディスインフレーション(インフレ鈍化)の兆しが見られないと語っていた。
2月1日のFOMC後記者会見では、スーパーコアの部分だけを取り出せば4%程度と答えていた。
それが、今回は3.7%まで下落したのだ。ここはパウエル議長が間違いなく歓迎するであろう。
金には売りの材料となる。
とはいえ、CPIの1/3ほどを占める住宅費が前月から0.8%、年率で8.1%も急増したことは気になる。
しかし、パウエル氏は、議会証言で、最近の賃貸契約動向を見るに、既に頭打ちは明確で、今後、低下してゆくと予測している。
そもそも、CPIは集計にも手間取るので遅行指標で6か月ほどのラグがあるとされる。
それゆえ、パウエル氏も上記の発言では「最近の賃貸契約動向」と先行的参考指標を引き合いに出していたのだ。
史上最速利上げの効果は、これから本格的に出てくることが考えられる。
このシナリオを基にすれば、仮に22日の3月FOMC時に、市場の金融不安感が後退しつつあれば、3月の利上げ幅が0.25%となる展開が考えられる。
とはいえ、金融不安に関して、まだまだ楽観的にはなれない。
市場目線で要注意は、格付け機関の判断である。
危機的状況のときに、引き金を引く役回りになりやすいからだ。
14日には、ムーディーズが、銀行セクターの見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。
FRBの緊急融資を財務省がバックストップする措置が発動されても、含み損を抱え、保護されない顧客もいる金融機関にはリスクが残るとしている。
かくして、FRBは、物価の安定と金融システムの安定の狭間に揺れる。市場のボラティリティも高まる。
14日のNY市場は、黒海空域でのロシア機・米無人機衝突の第一報が日中に入るや、それまで400ドル以上上げていたダウ平均株価が、瞬時に急落。
しかし、引けにかけ、空売りポジションが買い戻され、336ドル高で終えた。
一時は「暗黒の火曜日か」と言われるほど緊張感が高まった。
こういう偶発的か意図的な軍事衝突は、地政学リスクとして金には買い材料となる。
今晩は、PPI(生産者物価指数)の発表が控える。