米銀行破綻の連鎖を不安視したマネーが米国債と金という二つの「安全資産」を買い上げている。
米財務省とFRBの連携プレーで、預金者は全額保護されるが、市場の警戒感は収まらない。
ドル金利は、僅か1週間で10年債が、4%台から3.5%程度まで、2年債が、5%台から4%まで、暴落中だ。
金利上昇が天敵である金にとっては追い風。
しかも、ドル安という金にとっての追い風も吹く。
Youtubeでも語ったことだが、想定外の金融不安により、来週に迫った3月FOMCでは、0.25%「利下げ説」や、QT減額説が、いよいよ現実に飛び出してきた。
これも、金には追い風。
132円など円高に振れているので、円建て金価格には下げ要因もあるが、ドル建て金価格の上昇ペースのほうが速い。(KITCOグラフ緑色線)。
本日のCPI(米消費者物価指数)、明日のPPI(生産者物価指数)が次の大きなマーケットイベントとなる。
今日の日経平均は昼の時点で500円以上急落中だ。
風雲急を告げる。
さて、欧米市場では、米銀行破綻破綻の戦犯つるし上げが始まっている。
今回破綻した銀行の監査法人である大手KPMGと、ベンチャーキャピタルだ。
まず、KPMGがSVB監査結果を問題なしと発表した14日後に同銀行は破綻した。
同監査法人はシグネチャー・バンクも担当。
やはり監査後、特段の指摘もないまま、11日後に同行は破綻した。
どちらも、2022年度の監査なのだが、それでも、リスクについての言及程度はあってしかるべき、というわけだ。
KPMGは、顧客の機密保護義務により、具体的事例についてコメントは出来ないが、一般論として、監査後に起きたことについて責任は負いかねるとの声明を出している。
更に、KPMGは、株価急落中のファースト・リパブリック・バンクも監査していた。
KPMGの視点では、どちらに転んでも負けの状況であった。
監査結果で警告を発すれば、取り付けの引き金を引くか、騒動をエスカレートさせたであろう。
今後、金融監督当局の判断が注目される。
次の戦犯は、ベンチャーキャピタル(VC)。
一部のVCが、SVBから手を引くようにアドバイスしたと批判されている。
増資計画にも乗らないほうが賢明と忠告したことが、SNSで瞬時に拡散され、取り付けも雪だるま式に増えてしまった。
日本流にいえば、メインバンクのように、色々世話にもなったパートナーを裏切り、結果的に、自らも大きな手傷を負うことになった、というわけだ。
批判の的になったVCは、いまのうちに預金を引き出しておけ、とも言えず、だからといって、預金を動かすな、とも言い難い切羽詰まった状況であった、と語る。
取り付け騒動を煽動する意図はなく、ただ、出遅れて、最後に取り残されるリスクを指摘しただけ、と言う。
いっぽう、今回は、SVBの運用姿勢に問題があったわけで、自業自得との見方もある。
SVB株を空売りして儲けたファンド・マネージャーに言わせれば、そもそもリスクをかかえたSVBを、様々な利害関係があるVCたちが、よってたかって、おもちゃにしていた、ということになる。
自ら売りを誘発したようなもの、というわけだ。
今回のような破綻の連鎖を見るにつけ、マーケットは、人間の欲と欲が裸でぶつかり合う、因果な世界だと、筆者はつくづく思う。
野次馬で見物している分には、テレビのドラマを見るより、遥かに生々しく、知的好奇心も刺激される。
しかし、現場にいた頃を思い出すと、自らの人生観まで刹那的になってしまう日々であった。
それゆえ、あの世界の現場に二度と戻りたくはない、とも思うのだ。