安全性と求めるマネーが金に流入している。
既に報道されているが、シリコンバレーの中核的地方銀行SVBが破綻した。
過剰流動性からマネー収縮へ市場環境が急転回するなかで、SPACや仮想通貨破綻劇に続き米中小銀行セクターの「床下からゴキブリが出始めた」。
ウオール街にも 反省感が漂う。事が発覚するまでSVB担当アナリストたちから破綻リスクへの警告は全く聞かれず、予想株価も200ドル以上で500ドルさえ見られたことが話題になっている。
ちなみに同銀行株価は先週木曜日に100ドル台まで急落後、金曜日には取引停止となったままだ。SVB株空売りをしていたヘッジファンドの人たちは、結果論だが、先見の明があった、と自画自賛している。総じて、楽観的であった市場は猛省すべしとの掛け声がしきりに聞こえてくる。
マクロ視点では、3月FOMC利上げ幅やターミナルレート決定のための最重要級要因とされた雇用統計についての議論が吹っ飛び、インフレ抑制のための利上げか、金融危機回避のための利下げか、というような議論が始まっている。
まずは、3月利上げ0.5%の確率が7割台から3割台まで一日で「暴落」した。QT(量的引き締め)も月額100億ドルから減額する案が語られる。
VIX(恐怖指数)も20割れの水準から20台半ばまで急騰した。
VIXの低迷に関しては、これまでも「金融環境の緩み」「不気味な静けさ」と語られることもあった。
サンフランシスコ地区連銀デイリー総裁も、従来はハト派であったが、最近はインフレ抑制重視のタカ派的発言が目立っていた。
しかし、今や、お膝元での金融不安勃発に、苦慮しているであろう。SVBはワイナリーとも取引関係があり、ナパ・バレーの生産者からの不安も報道されている。
しかし、3月FOMCを22日に控え、FRB高官発言を控えるブラックアウト期間に入っており、市場は暗闇を手探りの状況だ。
SVB救済の動きは週末に進行して、NY市場も休日返上で、状況の変化を注視した。
全ての預金者を保護と伝わるや、一定の安堵感が時間外の市場で浮上した。
なお、リーマンショックとの比較もしきりに論じられるが、ここは冷静な判断が必要だ。
リーマンショックでは、低所得者層向け住宅ローンを束ねて証券化した商品が大量に世界中で出回っていた。
しかし、今回は、多くの米銀が大量保有して金利高による含み損を抱えているのが国債とMBS(住宅担保債券)である。
更に、質への逃避として、米国債が買われ、ドル金利急落の一要因となった。10年債も2年債も利回りが一日で20bpを超える急落を記録している。
その結果、外為市場ではドル安・円高に転じた。
影が薄くなった感もある雇用統計だが、基本的に30万人超という雇用の強い伸びと、失業率が微増とはいえ依然3.6%という歴史的低水準にある状況は変わらない。
労働参加率がやや好転傾向で、平均時給の伸びが鈍化したことは、インフレ抑制の視点で評価される。
14日のCPI発表で、金融不安要因との対比が深く議論されよう。
これらの状況を総合評価して、NY金は買い。
1,800ドルの大台を彷徨っていたのが、1,870ドル台まで急反発。
一時は1,900ドルに接近の場面もあった。
円高で相殺されても、円建て金現物小売金価格は9,000円を超えた。
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