首題の記事が本日日経朝刊に載っています。
まぁ、私がロシア人だとしても、資産をルーブルで持つのは嫌ですね。
なんとか、外貨(含む金)を保有しようとするでしょう。
ルーブルという通貨に対する信頼感はがた落ちですから。
中国で、国民が人民元を信用せず、外貨(含む金)の割合を増やしたがることも同様です。
特に、ロシアの場合は、経済制裁により金でさえ、自由に海外の主要金市場で売買出来ないのに、それでも、やはり金が良いのですね。


筆者は、WGC時代に、色々、各国の金事情を直接見てきましたが、金は経済制裁をすりぬけて、国内に持ち込まれたり、国外で売却されたりすることが多いです。
例えば、ドバイーイランーロシアルートで中東の金最大中継基地ドバイ経由で、かなりの量の金現物が流れることを目撃したことがあります。
イランへの経済制裁の抜け道になっていました。
更に、イランとロシアの関係は近いですからね。
たまたまドバイの金地金商を訪問していたとき、ドカーンと地震みたいな揺れと音でたまげたのですが、現地の人たちは平然と、「また2~3トンの金が、中継基地を通ってゆくのさ」と語っていました。
ドバイはカザフスタンなど中央アジアから北アフリカまで膨大な金の商圏を持ちます。
フィンランドとロシアの国境も見たことがありますが、東名道路の東京インターチェンジみたいにブースが並び、トラックが果断なく行き来していました(ウクライナ戦争前のことです)。
金も経常的に持ち込まれたり、出荷されたりしていました。
要は、その気になれば、あれだけの国境を持つロシアの人たちが、経済制裁網をかいくぐって金売買することは決して難しくはないのですよ。


今回、ロシアの個人の地金・金貨の純購入量は25トンとWGCは発表していますが、私は、それより大規模だと確信しています。
チューリッヒ経由もありますから。
中期的に、ロシア、ドイツ、スイス、オーストリアで新たな金需要圏が出来ると思っています。
中国・インドほどではないにせよ、少なくとも年間100~300トン程度の需要は見込めます。
ドイツやオーストリアはまさに有事の金を信じる国民性があります。
金ETFも買われます。


それから、ロシアは、過去の危機のたびに、推定2,000トン規模の金をロシア中銀が欧米市場に売却して、外貨を調達してきた歴史があります。
トイレットペーパーを輸入するために金を売却するなどといわれたものです。
金の有難みをプーチンはじめ、上層部は身をもって経験してきているのです。
ですから、モスクワの金保管金庫が大量売却で空になると、原油価格が上昇してロシアの国庫が潤沢になれば、まず金を買い戻して2,000トン程度は有事の備えで保有することを繰り返してきたのです。
ロシアは有力な金生産国ゆえ、国内で、金をつけかえることも可能です。
特に、ロシアの大金持ちの連中は、経済制裁の対象になっていますが、独自のルートで、金などを動かすことが出来ます。
運びやすい金は、神出鬼没なのです。
但し、このような金現物の流れを正確に量的に把握することなど、不可能ですよ。
結局、世界の総需要と総供給の差で説明できない部分が、非公式ルートによる金需要として統計的にはresidualとして処理されるわけです。