次期日銀総裁、誰がなっても貧乏クジ
本命の雨宮さんが「辞退」して、ダークホースの植田和男 共立女子大教授が次期日銀総裁候補となった。
日本の経済メディアはハチの巣をつついたような騒ぎだが、海外では、例えばウオール・ストリート・ジャーナル紙はトップページではなく、マーケット面の4番記事で日銀総裁人事についての記事を載せていた。
要は、NY市場の視点では、誰が次期総裁になろうとも、日本経済の大きな変化は起きないと読んでいるからだ。
筆者も、ウオール街の友人たちに、日銀総裁について、色々話を試みた。しかし、彼らは、興味もなく考えたこともないから私の質問にも答えようがない。「悪いな、よく分からん」でおしまい。
たしかに、誰がなろうと、そもそも、日銀の金融政策手段は限られているので動きようもない。仮に、1%の利上げでもやろうものなら、東京市場を金融財政ショックが直撃するだろう。日経平均は暴落するだろう。10年も黒田流ゼロ金利(マイナス金利)と異次元の量的緩和に慣らされてしまったのだ。日銀の超緩和政策がなくなれば、日本の企業は中毒症状を引き起こすであろう。大手格付け会社S&Pは、それを理由に、日銀が金融正常化(利上げ)を急げば、日本国債の格付けを再検討せねばならない、としている。
筆者も、セミナーで次期日銀総裁について聞かれると、こう答えてきた。「では、次の日銀総裁は誰になるか、だれがなったって、出来ることは限られています。(海外市場のプロたちは)もう足元を読んでいるのですよ。」(2022年11月18日の経済俱楽部講演。ここは、90分の講演と質疑応答を全て書き起こして、会員に配布している。大正時代から始まり、この講演が、4434回目)
それから、バーナンキ・イエレン元FRB議長が、両氏とも民間のブルッキングス研究所に籍を置いていた頃、ある座談会で、イエレン氏が、こう語った。「(おカネをばら撒いた)バーナンキさんの後始末(おカネの回収)を私が実行することになって、損な役割だと思いましたよ」と、軽く冗談っぽく話したことがあるが、同氏の眼は笑っていなかった。
今回の日銀総裁人事は、おカネをばら撒いた黒田さんの後始末役で、マネーを回収する、という貧乏くじを、植田さんが引き受けるわけだ。本命視されていた雨宮さんが辞退したのは、たぶん正解だと思う。日銀生え抜きで、実態のヤバさが分かっているからこそ、身を引いたのだと思う。
金融正常化(利上げ、量的引き締め)は、言うは易し、行うは難し。
学者出身の日銀総裁だと、あっけらかんと超緩和政策を停止して、利上げを開始して、日本株が大暴落するかも。いずれ金融正常化が不可避なら、あれこれいわず、就任早々ばっさりやってしまえば、と思ったりしている。