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市場大注目の12月CPI(消費者物価指数)は、ほぼ事前予測内の結果となった。
年率7.1%から6.5%へ低下。
しかも、前月比では、マイナス0.1%つまり物価上昇から物価下落に転じた。
2022年に9%台まで上昇したが、明らかにインフレ鈍化傾向がみてとれる。
朧気ながらもインフレの出口が見えてきた。
これで2023年市場予測も,かなり視界が開けた感がある。
NY市場では、先走り気味に「ゴルディロックス=適温経済到来」と、米経済の軟着陸の現実味が語られる。
市場が予想する到着金利も5%を割り込んでいる。
FRBが年内にも利下げへ転換するシナリオも現実味を帯び、米債券市場では、ドル金利低下に歯止めがかからない。
外為市場ではドル売り・円買い・ユーロ買いに拍車がかかる。
ドル金利安、ドル安となれば、金には上げ圧力がかかる。
「インフレ・ヘッジの買いはどうなの?」との素朴な疑問も残るが、強いインフレ傾向鈍化といえど、長く続いたディスインフレの時代に比べれば、間違いなく、これからは、長期的基礎的インフレの時代となるは必至だ。


既に日本の物価上昇率も年率4%台に乗ってきた。
問題は、CPIで、これだけ「状況証拠」が揃っても、FRBの利上げ継続姿勢は変わらないこと。
せいぜい一回の利上げ幅を0.25%に「正常化」する程度だ。
到着金利5%超え且つ同水準を年内或いは2024年まで維持との見解も変わらない。
12日には、ハーカー・フィラデルフィア地区連銀総裁が0.25%刻みの利上げを支持した。
ブラード・セントルイス地区連銀総裁は、「一刻も早く政策金利を5%以上に設定すべき」と語った。
FRBは、これほどCPI低下傾向が明らかになっても、なぜ「タカ派姿勢」を変えないのか。
11日のウェビナーにおけるデイリー・サンフランシスコ連銀総裁の答えが明解だ。
「住宅関連を除くサービス業価格(コア・サービスと呼ばれる)の上昇が抑え込めない」
財とエネルギーの価格は、供給制約緩和により、下げ基調。
更に、住宅価格が下がると、通常16~18か月のラグで家賃も頭打ちとなることも読める。
しかし、労働集約的なサービス業の価格水準には、全くといっていいほど下落傾向が見られない。
歴史的にもサービス業価格は下がりにくい。
それゆえ、私も到着金利予測を5%超の水準に置いている、と明言している。
12月CPI発表後にNY市場に流れたグラフでも、CPIのコアは明らかな下落傾向だが、コア・サービスは上昇傾向と対比が鮮明だ。


なお、コア・サービス統計はCPIではなく、FRBが重視する米個人消費支出(PCE)統計のほうに含まれる。
11月PCEでは、外食や宿泊関連を中心にサービス支出が伸び、新車中心の財への支出の減少と対照的な結果となった。
それゆえ、市場は1月27日の12月PCEの発表からも目が離せない。
そして今後の金・外為市場展開は?
12月CPI発表後に進行したNY金高・円高だが、PCEのコア・サービスにまで下落傾向が確認できれば、更なるNY金高・円高が見込まれる。
逆に、サービス部門価格や人件費が引き続き高止まりすれば、FRBの利上げは、「より高く、より長く」なり、一転、NY金安、更にドル高・円安再燃のシナリオとなる。
筆者は毎度語ってきたように筋金入りの円安派。
この程度の円高など、長期的な推移のなかの一幕と見る。
今年は日銀総裁も代わるが、日銀の政策選択肢は極めて少ない。
日銀クラブが騒いでいるだけだ。
例えば日本で0.75%刻みの利上げ4回など、考えられない。
同じ金利上昇でも日米では大きな差がある。


なお、NY市場の逆イールドもCPI発表当日にエスカレート。
特に市場の眼は「10年債と3か月財務省証券」のイールド格差に集中してきた。
長短金利差マイナス幅が1.2%(120bp)を超えるという歴史的な乖離を示しているのだ。
けた違いの逆イールドとなってきた。
これは、利上げ不況が深刻となる可能性を映すシグナルとして、安全資産としての金の視点で注目すべきポイントである。