注目の雇用統計については、YouTube豊島逸夫チャンネル「雇用統計ライブ」でタップリ解説した。


市場の反応だが、発表直後の動きが、その後、変化した。
ホットな雇用統計にも関わらず、ドル金利は下落、外為市場ではドル安、NY金は1,800ドルを再突破したのだ。
この背景としては、11月30日のパウエル講演で、利上げペース減速が明示されたことが未だに効いている。
とはいえ、労働市場では、失業者1人に対して1.7人の求人数という異常な事態が続いている。
雇用統計の平均時給も急上昇した。
パウエルFRB議長を困惑させる結果となっている。
結局、利上げ幅は0.75%から減速されても、2023年には0.5%或いは0.25%幅の利上げは継続されそうだ。
その結果、ターミナル・レートは5%を超え、しかも、その高水準は2023年通年で継続される可能性がある。
FOMC内ではハト派の主導格であるデイリー・サンフランシスコ連銀総裁がでさえ、「5%を超えた水準が維持される」ことを「上げた状況を留め置く(raise and hold)」と表現している。
しかも、この5%を超えるプロセスを、パウエルFRB議長は11月30日の講演で「手探り」と語っている。
ドル金利が2023年通年で5%超となれば、外為市場の基調はドル高となろう。


更に、雇用統計の次の注目はCPIだ。
くしくも12月FOMC初日の12月13日に発表という巡り合わせになっている。
雇用統計の新規雇用者数が事前予測より上振れたように、CPIも蓋を開けてみなければ分からない。
なお、筆者が、雇用統計後の市場で最も気になるのは、逆イールド拡大が加速したことだ。
政策金利に連動する2年債は4.3%台、将来の景況感を映す10年債は3.5%台。
長短金利スプレッドはマイナス0.8%に接近中だ。
この金利格差幅の大きさは異常というほかない。
市場は雇用統計後にドル金利水準が下落したことを注目するが、逆イールド拡大のほうが、不気味である。
スタグフレーションの可能性がちらつくからだ。
ISM製造業景況感指数が50を割り込み49と不況領域入りするなかで、FRBが最も重視するPCEインフレ率は伸びが鈍化したもののコアで5%と目標の2%を大きく上回る。
そして、逆イールド拡大とスタグフレーション・リスクこそ、2023年金価格上昇要因となるのだ。

さーて、今晩は運命のクロアチア戦。
NY市場相場モニターとサッカー中継を同時ウオッチになりそう~。
先日は、筆者の日経寄稿記事が、堂安選手活躍記事に並び、光栄であった(笑)

 

豊島氏の日経寄稿記事

それから、暗号資産バブル崩壊について、産経新聞に取材されて、以下の記事になった。
分かりやすく纏まった内容になっている。


https://www.sankei.com/article/20221204-HO62TVBC7BOE7HIIDWO2OOUC5A/