セミナーで参加者からの質問に答えていると、円建て金価格に関して、誤解があることが気になる。
素朴な発想としては、円建て金価格が上がっているのは、日本での金需要が増えているから。
逆に下がっているときは、日本での買いが引っ込んでいるから。このように考える人が少なくない。
しかし、実態は、円建て金価格が史上最高値をつけるなど急騰しているとき、日本国内では、保有していた金を売る傾向のほうが強い。
安く買ったひとが利益確定売りに走るわけだ。
逆に、急落すると、日本国内では、値ごろ感から金の買いが増える。いわゆる押し目買いだ。
結局、円建て金価格は国内の金需給を反映した数字ではない。
残念ながら、日本国内の金需要が国際金価格に影響を当てるほどの規模ではないのだ。
そもそも、円建て金価格は、NYやロンドンの金市場で売買されるドル建て金価格を、同時点のドル円相場で円換算した数字である。
いってみれば、NY金と円相場の変数二つから成る連立方程式から導かれるわけだ。
それゆえ、この金のコラムでも、為替要因が頻繁に出てくるのだ。
特に、今回の円安局面では、円安の進行速度のほうが圧倒的に強い価格形成要因となった。
来年も筆者は基本的に円相場は従来の100円とか110円の円高基調には戻らないと見ている。
2023年後半に、米国利上げ不況が本格化して、FRBが一転、金融政策の舵取りを引き締めから緩和に転換すれば、120円程度の円高に振れる局面もあるかとは思う。
とはいえ、120円といえば、従来であれば、かなりの円安水準だ。
市場がリスクオフになり不安感が充満すると安全通貨として円が買われるという「円高神話」は既に崩壊した。
より現実的には、来年末に130円程度の円安の可能性は高いと思う。
しかし、その過程では、まだまだ150円を超える円安局面もあり得る。
全ては、今後の米国経済指標の出方次第だ。
なお、円相場を「鳥の目」で俯瞰すれば、日本の稼ぐ力は少子高齢化とともに長期的に衰退するので、10年後には160円が主流になっても驚かない。
外国人投資家による円の見切り売りという怖いシナリオだ。
それゆえ、筆者はドル預金も長期的に保有しているわけだ。
いっぽう、NY金は、今年弱気であった筆者も、強気に見ており、来年は、NY金高と円安のスピード調整が拮抗する可能性も高い。
その場合は、NY金高と円高で円建て金価格は膠着する。
「膠着」という表現を聞くと、投機家は「つまらない相場」だと言うが、長期投資家或いは実需家には、安定的に推移する円建て金価格は望ましい現象といえよう。
(まぁ、そのときは、このコラムで、グルメ関連のコンテンツが急増すると思われるが(笑))
今日の写真は、会津の「みしらず柿」。
江戸時代に会津特産のこの柿を会津藩主が将軍に献上したところ「未だかかる美味なる柿を知らず」と称賛されたことに拠るらしい。
実は、渋柿なのだが、じっくり渋抜きして、旨味を引き出すので、味がまろやかで深い。
それから、家族ぐるみの長年の付き合いである尾河眞樹君(ソニーフィナンシャル)と雑誌で為替対談をやった。
結論は見出しを見てのとおり。