11月FOMCで、パウエルFRB議長は、利上げの速度は慎重に、利上げの終着点は高めに、利上げの期間は長めに、とのメッセージを発した。
具体的には、12月利上げ幅は0.75%以下に減速の可能性を示唆したものの、終着点は9月予測時より高く、利上げの期間は2023年にかけて、これまでの想定より長期化する可能性に言及した。
この新基本方針は1回や2回の経済統計の振れで変わるものではないことは、パウエル氏が常々強調している。
単月で大きく振れても「ノイズ(雑音)」と切捨て、少なくとも数か月のトレンドで判断する姿勢だ。
しかし、市場は短期投機筋が多いので、月次の動きに反応して、ボラティリティが高まる傾向が顕著だ。
経済統計の解釈も、彼らのポジションに都合の良い後講釈がまかり通る。
例えば、10月雇用統計に関しても、新規雇用者数は増えたものの失業率は悪化して、強弱混じる結果となった。
しかし、市場は弱い解釈を選択した。
債券市場では、更なる金利上昇傾向を見込み、米国債売りポジションが膨らみ、外為市場ではドル買いポジションが累積していた。
しかし、中間選挙とCPIを次週に控え、とりあえず利益確定のためにポジションを巻き戻して、身辺整理のうえで、次週を迎えたいとのトレーダー心理が優先した。
結果は、ドル金利安、ドル安、株高となった。
そこで、NY金はKITCOグラフの赤線に見られるように、大きく反騰した。

 

kitco

なお、FRB高官発言も、いいとこ取りで利用された。
バーキン・リッチモンド地区連銀総裁は「ブレーキをかけて方向性を変えるときは、用心深くなるものだ。私なら、そうする」と語ったことが12月FOMC利上げ0.75%から0.5%へ減速と解釈された。
「利上げ期間は長くなり、潜在的に終着点もより高くなる」との一節は無視された。
コリンズ・ボストン地区連銀総裁の発言も「先走りせず、利上げペースをやや遅くすることは理にかなっている」と語った部分が市場を独り歩きした。
「フォーカスを利上げの速度から、どこまで金利を高くするかに移す時だ」との下りは注目されなかった。
今週のCPIも、上下に振れる可能性はあるが、それで新金融政策の基本路線が変わるはずもない。
なお、筆者の実感だが、雇用コスト指数と求人件数がパウエル発言で引用される傾向があるので、要注意だ。
雇用コスト指数は雇用統計に比し先行指標であり、その水準が年率5%で高止まりしている。(今や絶滅危惧種に近いFRB内のハト派から見れば、5%の水準で頭打ち傾向とも読める。)
求人件数は、1,000万人の大台でやはり高止まりしている。
ここが少なくも800万人程度に下回る月が3回程度続かないと、パウエル金融政策は変わらないであろう。
今週発表のCPIは、年率8%の水準で下落しても、やはり高止まり傾向は変わらず、6~7%台が3か月程度続かないと、インフレ鎮静化の兆しとは言えないと思われる。
但し、短期筋は月次の変動に一喜一憂する。この傾向は変わらない。
外電などの報道の見出しに、「急上昇」「急落」などの見出しが躍れば、アルゴ系は自動的に反応する。
「ヘッドライン相場」と揶揄される所以だ。
一般投資家は、じっくり見極めることが肝要である。
金1,600ドル台は底値圏との筆者に見解は変わらない。
たまたま先週金曜日はNY金が反騰したが、重要な点は、トレンドとして底値圏は固まりつつあることだ。
最近の米経済指標で「利上げ不況」の兆しも顕著だ。
中国のロックダウンも、3月に緩和との根拠ない楽観説が株式市場では流れるが、これから厳しい冬季に入り、ウイルスも再活性化する。
既にロックダウン地域は拡大。
2億人以上(!)が隔離されているとされる。
米中同時不況の可能性が高い。
そうななると、2023年のどこかの時期でFRBの金融政策も金利下落に動くであろう。
そこが金利急騰の呪縛から解放される金の安全資産としての出番だ。


NY市場でも、久しぶりに金が底打ち、上昇する転換点を探る見解が出始めた。

 

NY市場

それからFOMCと雇用統計のライブYouTube配信
雇用統計直後は、ドル高、ドル金利高に振れていた。
その後、急速にドル安に転じたのだ。
ライブでやると臨場感は出るが、瞬間的相場変動に限定されるというのが筆者の教訓として残った。


最後に、先週金曜の雇用統計前に酉の市に行ってきたよ。
今年は三の酉まである年。
先日行った鹿島神社のお祭りといい、久しぶりの凄い人波。
神社の本殿にお参りするひとは長蛇の列であったが、肝心の、お馴染み酉の市の縁起物(熊手)の売れ行きはいまいちみたい。
飲食店オーナーなどが買うのだが、未だ、コロナの傷も残り、買うだけの余力が戻っていないね。

 

酉の市の縁起物(熊手)

逆に、鹿島神社のお祭りでは、本殿前はガラガラでお参りする人は少ないが、数百円単位の夜店は長蛇の列であった。
みんな、ひさしぶりのお祭りで盛り上がっているのだよね~。
でも、足元の現実は未だ厳しい。

 

鹿島神社本殿前