金の役割は、総じて、経済や政治で悪い出来事が起きたときに、実物資産である金の持つ独自の希少価値が、その威力(安定性)を発揮することにある。
今でいえば、スタグフレーション(物価は上がるは景気は悪くなるは、泣きっ面に蜂現象)、或いは台湾有事、ロシア侵攻、北朝鮮ミサイル着弾。
どれも、願わくば起こっては欲しくない。
日本周辺の有事は、これまでは、そのようなケースを論じれば、「恐怖感を煽り、金のセールスか」と言われたものだ。
ところが、今や、他人事とか絵空事とは片付けられないリスクとして、多くの日本人が感じるようになった。
日本人の一人として、そんな時代になってしまったか、と痛感するが、セミナーなどでは、皆、真剣に有事の議論に聞き入っている。
スタグフレーションのリスクについても、そもそも日本の景気はコロナ前からお世辞にも良いとは言えなかった。
そのうえに、コロナ由来で世界的物価上昇。
更に、円安で輸入物価急騰。
資源を輸入に頼る国のリスクを、これまた思い知らされている。
このような時代だからこそ、金の売買で一儲けというような都合の良い話は転がっていないことも、骨身にしみて分かっている投資家も多い。
「リスク分散」という専門用語を使わなくても、矢を3本持てば折れにくい、という直感的発想で、とにかく、色々な資産に分散しておく、ということも、おぼろげながら分かってきた、という反応が目立つ。
そこを確認したくて、セミナーに参加したとの声も聞こえてくる。


ネットで色々な情報が入ってくるが、一人でどれが信頼に足る情報が判断することは不安なものだ。
そこで、役立ってくれているのがYouTube。
私にも意外な展開であったが、話している人が顔をネット上で晒して語りかけることで、その人の性格とか信頼性が判断できるからだ。
少なくとも、書いたものを読むより、実感はある。
ただし、筆者の眼で見る限り、YouTube上の金に関する情報は、極めてお粗末な話が溢れている。
まさに恐怖感を煽るようなサムネイルとか、実にお粗末な「理論」とは言い難い屁理屈などが、ずらりアップされている。
筆者のYouTubeも、場合によっては、その類と同一視されかねないリスクはある。
ここは辛抱強く地道に語り続けるしかない。


そもそも、金を知るということは、世界に目を向けなければならない。
日本人が不得手とするところだ。
国内経済とか円とか、内向きの話だけでは、金の理解は深まらない。
いきなり金だ、プラチナだと、話始める前に、じっくり世界情勢を語り理解してもらえば、自然に金の必要性が頭のなかでジワリ浮上してくるものだ。
総じて、投資で買った株が紙くず同然になったなどの失敗体験がある人ほど、金の有難みが言われずとも分かる。
幸いに失敗体験が無いひとほど、分からないものだ。
それにこしたことはないのだが、将来的に悪徳商法に引っ掛かりやすい傾向があることは筆者が見てきたことだ。
痛い目に会わないと分からないということだよね。


話の次元は異なるが、自転車の暴走事故が頻発して警視庁もついに悪質なケースではレッドカードを切ることになった。
これも、被害者が痛い目に遇うという事故が連発して、初めて皆がリスクを感じ始めたわけだ。
対して、加害者は、その事故リスクに全く無頓着であった。
筆者も自転車では苦い体験が2つある。
ひとつは、子供の頃、自転車に乗り、四つ角でいきなり渡り、正面衝突したこと。
その後、例えば、ママさんが子供を前の荷台に乗せ、自転車で結構なスピードで四つ角に突入する局面を何度も見てきた。
このママさんは、子供の頃に、私のような痛い体験をしなずに済んだのだと感じる。
もうひとつは、これは、本当に怖かった。
タクシーで住宅街を走行中、いきなり、三差路で自転車に乗った女の子が前方確認せずタクシーに突入したのだ。
後部座席に居た筆者は、その瞬間の、窓越しの少女の恐怖の表情をまざまざと覚えている。
死亡事故にはならなかったのが不幸中の幸いと言おうか。
この少女は後年、子供を持ったら、交差点注意と厳しく教育しただろうね。