11日の米国株式市場は、久しぶりにダウ400ドル超の急騰で下げ一服感に安堵していた。
ところが、日本時間午前2時以降、事態が一変。
ダウは、またたくまに400ドル以上急落。
引き金を引いたのはイングランド銀行総裁であった。
英国年金危機に痺れを切らせ、「3日の間にリバランスせよ」と、事実上の最後通告をつきつけたのだ。
英国年金基金は袋小路に立たされている。
低金利時代に安定的リターンを達成するため、低水準の変動金利で運用して、年金受給者に一定の給付をするため固定金利にスワップしたうえでで運用成果を出すことが必要となった。
ここで使われたデリバティブが金利スワップ。
しかも、低金利下で運用成果を出すために、レバレッジを5倍以上掛けた。
このデリバティブの弱点は、金利が急騰すると損失も急拡大することだ。
その恐れていた事態が、9月28日に「イングランド銀行ショック」というかたちで露わになっていた。
年金は損失を埋めるために保有する英国債を投げ売り同然のかたちで市場に放出。
しかも、銀行からの融資に担保に差し入れていた英国債まで、急速な債券値下がり(金利急騰)による追加担保(マージンコール)を支払うため売らざるを得なかった。
年金運用を保全するため、英国債を売れば売るほど、マージンコールが膨らむ。
英国年金は袋小路に立たされた。
時限的措置としてイングランド銀行は、インフレ抑制のための利上げと同時に、年金救済のため英国債購入(量的緩和再開)という矛盾した金融政策を強いられた。
しかし、ここに至って、堪忍袋の緒が切れた様相だ。
「3日間のうちにリバランスせよ」と、事態収拾を迫るが、年金側に妙案があるはずもない。
結果的に、英国年金危機のリスクが強調されることになった。
この不安感は、既に神経質に揺れていた米国債券市場にただちに伝播。米10年債利回りが3.8%半ばから3.9%半ばまで急騰。ダウは400ドル規模で急落したのだ。
米国市場の不安定性も浮き彫りになった。
全ては、FRBの金融政策が読めず、しかも、FRB自身も読めていないことに尽きる。
まずは13日発表のCPIにFRBも市場の次の一手のヒントを求める。


なお、ドル金利上昇で円安も進行。
いよいよ、新黒田ラインとされる146円を巡り、ヘッジファンドと日銀のせめぎ合いが始まる可能性に現実味が増す。
NY時間に入ると、ヘッジファンドに日銀への忖度はない。
日銀円安抑制にも思わぬ伏兵が現れるという成り行きだ。

 
そして、金も1,660ドル台で推移している。
なお、この顛末は、早速、今朝7時過ぎに、youtube豊島逸夫チャンネルで緊急解説した。


https://www.youtube.com/watch?v=JCTcxqyhOgQ