明日には米消費者物価上昇率。来週9月20,21日には、いよいよ9月FOMC。 既に、FRB高官が情報発信を控えるブラックアウト期間入りしている。そこで、先週は、パウエル議長始め、FOMC参加者の公的発言が続いた。
市場では、9月利上げが0.5%か0.75%か、と囃される。しかし、FRBの視点は、1回や2回の上げ幅もさることながら、今回の利上げサイクルの終着駅が4%を超えるのか否か、に集中している。
例えば、インフレ指標上昇が更に加速すれば、来年早々にも4%をかなり超える水準にまで政策金利を引き上げる必要があろう。逆に、減速が顕著になれば、4%以下の水準で利上げに終止符が打たれよう。この「4%」が、マジックナンバーの如くFOMC内では意識されている。
更に、インフレ指標の継続的改善、悪化が認められることが最終判断基準だ。1回や2回、上振れ、下振れしても、統計的「外れ値」或いは「ノイズ」として処理されよう。
重視されるインフレ指標は、PCEインフレ率だ。CPIよりも幅広い品目の物価動向を調査して、調査品目も毎年見直されるため、より精度の高い物価指数とされているのだ。
市場はPCEインフレ率よりCPIに特に強く反応するので注意を要する。短期の売買益を取りに動くヘッジファンドが、CPIを特に囃す傾向があるので、要注意だ。
更に、NY連銀の家計サーベイで発表される消費者が見る期待インフレ率も、パウエル議長は重要視していることを明らかにしている。
なお、今週は、明日、CPI発表があるが、ここ2か月では年率9.1%→8.5%と頭打ち傾向が見られた。この逓減が年末から年始にかけて続けば、利上げ停止(pause)も考えられよう。但し、緩和傾向にピボット(政策転換)すれば、インフレはぶり返す傾向があるので、FRBも極めて慎重にならざるを得ない。パウエル議長に言わせれば、人々がインフレ傾向が今後も続くと思い込んでしまうことが、最も懸念される。それゆえ、その集団心理の根を断つほどに強い引き締めが必要という論旨になるのだ。CPIが8%台から5%台に下落することは、振れの大きい品目が下落することで、十分に考えられるシナリオだ。難関は5%から2ないし3%台までの下落段階。ここは、家賃、人件費などsticky(粘着性が強い)と表現される品目の下げが必要なのだ。CPIの2%台となると、レーダー・スクリーンにも映らぬほど先の話であろう。
なお、米経済が2四半期連続してマイナス成長を記録したので、「リセッション入り」の定義を満たすと議論されることについて、FRBは明確に、米経済は強く底堅いと反論している。副作用の景気後退も、強い労働市場が緩衝剤となり、耐えうるとの見解を崩さない。
更に、今のFRBは、珍しく、ほぼ全員がパウエル議長と同意見で内部的亀裂は見られない。クラリダ前FRB議長も、テレビ出演で、これは特徴的と驚きを隠さなかった。
日銀が「永遠のハト」とすれば、FRBでは今や「ハトが絶滅危惧種」と言えよう。
なお、米利上げ強化を前提にドル買いトレードが依然根強い。買っては売りを繰り返してきた。利益確定のドル売りも随所にみられるので、ドル安局面も頻繁に生じるが、下がったところは、ジリジリ買い直される。ドル買いに対して、ユーロ売りも目立つが、依然、円が売りの標的となる場面が多い。ECBの利上げはスタグフレーションのリスクを孕む苦渋の選択だが、次の一手が読みにくい。やはり、一貫した緩和姿勢を崩さぬ日銀の姿勢が、円売りの安心感を醸成している。
さて、写真は、札幌の夕焼け。中秋の名月も大きく明るく真ん丸で見事であったが、写真では、うまく映らず。そして、機上から見た羊蹄山(蝦夷富士)。