経済制裁としてロシア産金禁輸が発動される成り行きだが、その実効性には疑問符がつく。
金消費大国一位の中国と二位のインドが親ロシア国という需要構図になっているからだ。
ロシアの年間金生産量は330トン。
対して中国とインドの二か国の年間需要は通常1,500トンを超える規模だ。
年間世界金生産量の5割前後をこの二か国が買い受けてきた。
中国は世界最大の金生産国(332トン)だが、国内需要を満たすためには不足分を輸入に依存せねばならない。
現状では、中国もインドも主としてロンドン金市場、一部はチューリッヒ金市場から輸入している。
その一部をロシアからの輸入に切り替えることは充分に可能である。
更に、ロシア中央銀行は2,298トンの金塊を外貨準備として保有する。
旧ソ連崩壊時に、ロシアは大量の公的金準備を欧米市場で売却して外貨を調達した歴史がある。
それゆえ、原油高で国庫が潤沢になるや、次の有事に備え、粛々と公的金購入を続けてきたのだ。
ところが、今回の経済制裁がロシア中央銀行にまで及び、2,298トンの金売却の道が塞がれてしまった。
公的金準備は「宝の持ち腐れ」になった。
これはプーチン大統領にとっても想定外の事であったと見られる。
そこで、中国がその一部を買い受ける可能性が浮上している。
中国は民間だけではなく中国人民銀行も外貨準備として無国籍通貨の金保有を増やしてきた。
ロシアからの直接金購入の対価は人民元で支払われるかもしれない。
国際決済通貨としての人民元の通貨圏を拡大することは、中国の通貨戦略でもある。
その過程では、米ドル一極通貨覇権に中国・ロシア共同作戦で対抗する思惑も透ける。
ロシア中央銀行は人民元保有を11%に増やし、中ロ共同作戦をアピールしている。


なお、インドは親ロだが、米国との関係も重視する立場だ。
あからさまにロシア産金を大量輸入することは控えるのではないか。
但し、武器をロシアから輸入してきた経緯もあり、ウクライナ情勢次第では、限定的ながらロシア産金を買い受ける可能性もあろう。
更に、中東も文化的に金選好度が高く、ロシア産金を輸入する事例が出来ても不思議はない。


添付写真はデリー金宝飾店舗にて。
女性店員とツーショットで鼻の下長くしているところ。(笑)

 

豊島氏とデリー金宝飾店舗スタッフ