これを聞いて、昔、豊島が言ってたな、と思い出すのは本コラムの長期読者。対して、最近、このコラムを読むようになった読者は???であろう。
最近、セミナーでの質疑応答で、この表現が飛び出し、懐かしかった。筆者のムック本の巻頭にも語られたことだ。
虫の目とは現場を見る目。
魚の目とは潮流を見る目。
鳥の目とは俯瞰する目。
この3つの目が、相場を見る際には、欠かせないということだ。
今の金相場を虫の目で見れば、米FRB高官発言や日々の金利動向と円相場の乱高下で短期的にレンジ内だが金価格が乱高下している。
魚の目で見れば、インフレ傾向がいつまで続くのか。
パウエルFRB議長もイエレン財務長官も、当初はインフレが一過性と見方を誤り、懺悔した。今は、おそらく今後2年程度はインフレの潮流が続くと見られる。米ドル高の潮流も未だ続きそうだが、そろそろインフレのピークに近いようだ。かといって、インフレが解消されるわけではない。
そこで、鳥の目で見れば(これが個人投資家には最も重要なことだが)長く続いたディスインフレの時代が終焉を迎え、インフレの時代が始まろうとしている。
国際基軸通貨としてのドルへの信認低下も変わらない。外国為替市場でドル高だが、投資家のドル不信任は続く。そこで金本位制に戻ることはないが、信用通貨制度のアキレス腱も露わになっている。中央銀行の金融節度が揺らぎ紙幣の額面価値の不信感が強まり、国の外貨準備として金が買われている。
いわば、中央銀行を信じる性善説から性悪説への転換が歴史の流れのなかで進行中だ。米露新冷戦に中国も絡むという地政学的変化も極めて重要だ。
有事の金の復権を連想させる。それもこれも、コロナという疫病が市場の景色を変えたと言えよう。
以上の3つの目を常に保つバランス感覚が重要なのだ。