昨日本欄で、2,000ドル接近中と書いたが、その後、NY市場で瞬間的に2,000ドルを突破した。
しかし、その後、一転、NY金は急落。1,970ドル台まで沈んだ。
やはり、この高値圏に入ると、ボラティリティ(価格変動)も荒くなる。
実需不在で、プロ同士の空中戦となる。2,000ドル大台突破により、プログラム売買が、利益確定売り注文を連鎖的に発動した。
金オプション市場でも、例えば1,900ドルで金を買う権利(コールオプション)を投資家が行使し始めると、オプションの売り手はヘッジのため、売らざるを得ない。
再度2,000ドル挑戦も局面もあろう。
しかし、歴史的高値圏が値固めされる過程は平坦ではない。
なお、昨日のNY時間では、午後にドルインデックスがドル安に転じると、金価格も反落した。
ドル高=金高、ドル安=金安、の構図である。
では、127円台に達した円安はいつまで続くのか。
以下に詳説する。
今、ウォール街の最大関心事は、FRBの利上げ連発が、景気後退を招くリスクだ。
先週14日に「戦争終結の手助けを」と中国に呼びかけたイエレン財務長官の講演でも、市場の話題になったのは、質疑応答で「財務長官として金融政策についてコメントする立場ではない」と断りつつ「物価と雇用の両方を満たすことは、不可能に近い組み合わせだ。手腕と幸運が必要である。」と明言した。
前FRB議長の発言ゆえ、説得力がある。
民間の著名有識者となると、更に議論がエスカレートしてくる。
テイラールールでお馴染みのテイラー氏(スタンフォード大学)は、5%の利上げ、サマーズ元財務長官は4~5%の利上げが必要と論じる。
米消費者物価上昇率が8%を超えるとき、政策金利が0.25%~0.5%の超緩和レンジに留まるなど、過去にも例がない。
しかも、今回はインフレ予防ではなく、既に8%超に達したインフレを抑え込むわけだ。
お馴染みタカ派主導役のブラード・セントルイス連銀総裁も、本日日本時間午前5時台に、米国CNBCのFEDウォッチャーであるリースマン氏とテレビ生出演で質問に答えていた。
利上げ幅は0.5%では不十分。0.75%幅が必要ではないか。
最終的に、少なくとも3.5%の利上げが必要だ、と語った。
市場は利上げを織り込んでいるとも論じた。
ドル金利は2%台まで上がってきた。
それゆえ、更なる引き締め強化に米経済は耐えうるとの判断である。
労働市場も逼迫している。
求人件数が1,130万件に達した。
人件費は上昇傾向で、企業もコスト増を転嫁せざるを得ない状況だ、と論じる。
対して、市場は、労働参加率が若干改善したものの、依然、コロナ前の水準を下回る62.4%に留まることを懸念材料として注視する。
FRBが利上げ路線に転換したものの、早晩、景気後退が顕著になり、緩和に逆戻りを強いられる「ハト派への転換」のシナリオも市場内には流れる。
結局、米国経済が、未知の領域で軟着陸出来るか否かは、年央まで不透明な状態が続きそうだ。
米株価に対する弱気論がくすぶり続けるであろう。
そして、米利上げの余波は円安となり日本経済にも影響が及ぶ。125円~130円の予想円安水準がいつまで続くのか。
パウエルFRB議長がどこまで利上げを強行するのか、との争点が最大の注目点となろう。
仮に、利上げにより米国経済が景気後退に陥れば、中間選挙を控え、引き締め強化も転換を迫られよう。
中期円安トレンドの転換が起きるとすれば、今年の秋が要注意である。
なお、短期的には円安局面、円高局面を繰り返しつつ、長期的には円安トレンドが続くであろう。
日本の人口動態、日本企業の非生産性などに注目した、日本の見切り売り的な円安シナリオを危惧する。