最近、対面も含めセミナーが再開され、色々質問を受けるので、代表例をまとめてみた。


―金価格予測


3年後には3,000ドル。
長期は強気。
但し、今年は、ドル建て金価格が再び上昇するとすれば、ウクライナ戦争でロシアが核兵器使用とか、FRBがインフレ制御に失敗してインフレ率が10%超えてしまうとか、まず、確率は低い事例になる。
年末1,800ドル前後か。
FRBが年末までに本当に7回利上げすれば、これは、金利を生まない金にはキツイ。
いっぽう、円安は未だ進行すると見るので、円建て金価格は最高値を更新する事例が増えそう。


―ドル高なのに、なぜ金高?


教科書通りには動かないケースが増えている。
外為市場ではドル需給でドル高になるが、長期的に、米ドルの国際基軸通貨としての信認が低下しているので、ドルの代替通貨として、金が買われやすい。
ドル高でもドル不安というわけ。
特に、中央銀行が外貨準備として金を購入する傾向はジワリ続きそう。


―金利との関係は?


ポイントは名目金利ではなく実質金利。
仮にFRBが政策金利をプラス2%にまで引き上げても、インフレ率が4%ならば、実質金利はマイナス2%になる。
これは金など実物資産、コモディティと株には追い風。債券、預金は保有しても実質価値が目減りする。
ちなみに日本のインフレ率は未だ0.5%。
しかし、米国に比し日本の経済規模が1/4程度なのに、FRBにひけをとらないほど、日銀は量的緩和でマネーじゃぶじゃぶ状況を続けている。
これは、今後のインフレ要因。


―コモディティとしての需給は?


まず供給面では、今の高い価格圏では、現物の売り戻しが世界的に急増中だ。
従って、需給はじゃぶじゃぶの供給過多。
それでも、先物主導で金価格は上がる、という投機的価格上昇。
対して、需要面では、歴史的高値圏で現物購入は減少。
いっぽう、欧米市場では、ドルの実質金利がマイナス圏に留まる限り、現物でも傾向としては金が買われやすい市場環境だ。
この「現物」には現物の裏付けのある金ETFも含まれる。


―ウクライナ戦争の影響は?


有事の金買いは長続きしない。
但し、ロシアの軍事侵攻により、中国が台湾に軍事侵攻するとか、北朝鮮が日本の領土に向けてミサイルを発射するなど、日本人にとっての有事が、絵空事、まさかのシナリオと切捨てられなくなってきた。
長期的に有事への備えとして金を保有することの意味が、日本でも出てきたといえる。
それから、ロシア中央銀行が保有する金2,000トン超は、結局、経済制裁で、宝の持ち腐れとなった。
ロシア国内で生産される年間300トンほどの金は買い取ると発表している。
その分、ロシアの金準備は増えるだろう。
このロシアの保有金を買ってくれるとすれば、中国だろうが、その場合に、対価は人民元ということになろう。
それでもロシアは良しとするか。
なお、中国の立場も微妙で、米国が経済的には重要顧客ゆえ、米国による経済制裁をまともに破ることには慎重にならざるを得ない。
特に、コロナが再発して上海までロックダウンゆえ、国内経済は厳しい。
それから、中国は人民元を国際通貨として決済に使われることを目標としているので、ロシアが人民元保有を増やしてくれる分には歓迎であろう。
かくして、微妙に利害関係がからむ。
総じて、金価格への直接的変動要因にはならないだろう。