市場はドル金利上昇、ドル高一色。
ドル建て金価格はKITCOグラフの緑線に示されるごとく1,920ドル台まで低下するも、円安の進行が加速。
昨日は日銀の「連続指し値オペ」という国債を指定した利回りで無制限に連日買い入れるという強力な短期金融政策を実施。
力づくで円金利上昇を抑え込んだ。
FRBは利上げ・引き締めに移行中で、世界の潮流も金利上昇なのだが、日銀は円金利が上がっては困るのだ。
その理由はインフレ率の違い。米国の年率7%超に対して日本は年率0.5%。FRBは過熱経済を冷やす必要があるが、日銀は低血圧症の日本経済に緩和マネーというカンフル剤を注入し続けねばならない。
この日銀の緩和継続強行措置を受け、円相場は一時125円に達した。
この日銀が繰り出した「連続指し値オペ」は、28日の欧米市場でも注目され、大々的に報道されたのだ。
このニュースで初めて円安の構造的要因を知った外国人投資家が多い。
「寝た子を起こす」ごとき結果となっている。
しかも、日米インフレ率・金融政策の違いや資源を外国に依存する日本の国際収支赤字傾向などの円安要因は分かりやすい。
商品市場や地政学的リスクなど分かりにくい要因に振り回されてきた欧米の一般投資家の視点に立てば、相対的に理解・納得したうえで円売りリスクを取れる。
ウクライナ有事に際しても、安全通貨としての円買いは起こらず、国際商品価格高騰による輸入額急増という円安要因が勝っている。
そもそもニューヨーク市場の感覚は、安全通貨といえば「ダラー・キング」即ちドルこそ王様なのだ。
しかも、GDP規模で日本は米国の1/4ほどなのに、日銀の総資産はFRBの約9兆ドルに対して5兆ドル半ばまで膨張している。
身の程知らずの量的緩和継続中といえる。
更にFRBは資産圧縮を開始する段階だが、日銀は量的緩和継続中で、テーパリング(緩和縮小)にも到っていない。
25日にはのウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁(ハト派主導格)がFRBの利上げ幅0.5%も辞さずと発言。米長期金利が一時2.5%まで急騰する局面があったばかりだ。
振り返れば、本欄2021年10月15日付 「円安も外国人主導の展開、118円オーバーシュートも視野」で紹介した時点では、まだ「先駆け」の国際通貨投機筋集団の動きであった。
それが、今後は「最も混み合うトレード」と化す可能性すら感じられる。
本欄で明示した彼らのターゲットも、118円から123円、更には127円と段階的に上がってきた。
特に127円と本欄で明示したのが先週水曜日のこと。
それが翌週には125円到達と、加速している。
いやはや驚いた。
この円売り軍団は「連戦、連勝」のモメンタムに乗り、「サンキュー、ミスタークロダ」と言い放つ。
ときあたかもドルインデックスは高騰。
100の大台に接近中だ。
ドル買いトレードの通貨ペアとして、通常はドルユーロが選択されるが、今回はドル円にスポットライトが当たっている。
「円キャリートレード」が復活中だ。
日銀「初」の金利抑え込み政策も、円安覚悟の窮余の一策と見做された。日銀の足元を見透かす如き言動も目立つ。
当然、日銀介入観測も流れるが、世界的金利上昇の潮流に逆行するごとき外為市場介入の成功確率は低い。
世界の外為市場がドルインデックス100接近というドル高志向ゆえ、介入が失敗したときの代償は高い。
更に、インフレ退治を優先させる米国は、輸入物価を抑えるドル高を容認の姿勢だ。
日銀の円安覚悟姿勢を「自国通貨安政策」と批判するどころか、本音は歓迎であろう。
日銀の抱えるジレンマが図らずも露見され、海外勢の円売り攻勢も、中期的なトレードとなってきた。
既に、第一波、第二波と、繰り出し、28日も125円に達した時点で当面の利益確定円買い戻しが集中した。
123円台まで戻したところで、すかさず、第三波エントリーのタイミングを模索中だ。参戦するヘッジファンドも、CTA(コモディティ・トレーディング・アドバイザー)などの短期筋から、中長期売買を手掛けるグローバルマクロ系にシフトしている。
2022年後半から2023年前半を見据え、130円へのオーバーシュートすら絵空事とはいえない地合いである。