日本時間土曜朝、筆者のツイッター@jefftoshimaで以下のツイートを載せたところ、22万を超すアクセスがあった。
オッサンツイートとしてはかなりの数だ。
「いやはや凄い1週間が終わった。引け10分前にダウ500↑でもちゃぶ台返しないか皆ヒヤヒヤ。なんとか逃げ切った。とはいえ金融超緩和から引き締めへ移行期の幕明け。株価に沁み付いたバブル的脂質をダイエットで減らし引き締め期に備える時期。FRBからの助け舟は来ない。パウエル氏は市場の友から敵役に変わった」
これが現在の株式市場の雰囲気である。
いっぽうNY金価格は、FOMC以来、下げが続き、再び1,800ドルの大台を割り込んだ。(KITCOグラフ、赤線)。
 

kitco

株も金も転機を迎えている。
パウエル氏主導のインフレ退治が、適温経済に軟着陸(ソフトランディング)出来れば、穏やかな株高トレンドとなろう。
その場合、金は売られよう。
しかし、ハードランディングとなれば利上げで不景気となり、株は売られ金が買われる。
この場合の金利上昇は悪性なので金には追い風となる。
ややこしいところで、見極めが難しい。


FRBにとって、異次元量的緩和から利上げと量的引き締めへの転換は、海図なき難所を渡る航海となる。
資産価格大変動の荒波は覚悟の上だ。
パウエル議長も1月FOMC後の記者会見で足元の株価波乱について問われたとき、「我々はなにも決めていないが、市場は数回の利上げと年内資産圧縮開始を織り込んでいる。我々の決定を先取りしていることは、市場とのコミュニケーションが働いていることを映す。金融政策は期待を通して効くもので、その意味では、適切といえる」と答えている。
この発言は、インフレ退治という政策目標達成のためなら、株安も辞さず、と解釈できる。
同氏は「そもそも我々は一つや二つの市場を見ているのではない。我々の政策目標に合致した市場変動か否かを見極めているのだ」とも発言した。
市場と一線を画す冷ややかな姿勢だ。
FRB議長は、金融緩和期に於いては、市場の味方として歓迎されるが、ひとたび引き締め期に入るや、俄かに敵役となるものだ。
その意味は市場にとって重い。もはや金・仮想通貨から株まで「なんでも上がる相場」など期待は出来まい。
むしろ「なんでも下がる相場」を懸念することになるやもしれぬ。
プロも一般個人投資家もリスク耐性が試されよう。
週末恒例のニューヨーク市場のプロ仲間とのズーム会議でも、画面に映る見慣れた顔が、この1週間で、かなりやつれて見えた。
サイドから照明が当たると、こけた頬の凹凸が目立つものだ。
はやばやと見切りつけ、故郷のオハイオに戻り、地元企業のCFOに転職する者もいた。
筆者も、2時間ほどの会議に参加して、やっとモヤモヤ感が幾分なりと晴れた思いだ。
これから金融正常化を体験するのだ。非伝統的金融政策から脱却して、正常の世界に戻るのだ。
過剰流動性相場の夢からの覚醒だ。
ほろ苦い夜明けのコーヒーなど味わう時ではない。
現実を直視して対峙する時なのだ。


金市場も、なんのかんのいっても、超金融緩和によるカネ余り、過剰流動性マネー流入という恩恵を受けていた。
それが、これからは期待できない、という意味では株式市場と同じだ。


なお、地政学的リスクが無視できなくなっていることも指摘しておく。
例えば、UAEのアブダビには、国のど真ん中にドローンが撃ち込まれ、原油施設などが損傷を受けた。
怖いのは、同国にある原発だ。韓国製を導入している。
万が一、ここを狙われたら、と思うと背筋がヒンヤリする。
ドローンを撃ち込んだのは、イエメンの親イラン武装組織。
そもそもUAEは、サウジとイランの間に位置して、微妙なバランス感覚で両陣営と微妙な距離感を維持してきた。
中東、ペルシャ湾の要にある。フーシは、今も、UAE再爆撃予告している。
この問題は、石油も原子力も排するエネルギー革命のジレンマを突いている。
風力発電は風が吹かないリスクを欧州が体験している。他の新たなエネルギーも、未だ発展段階だ。
そして、コロナ。オミクロンリスク。
本欄1月11日付で「2月初めにピークとなり、かなりトンデモない数の軽症感染者が出るが、2月半ば以降に急速に収束する」というシナリオを書いたが、どうやら、そのような展開になりそうな感じだ。