人口14億人の中国は世界最大の金需要国。
筆者は、中国の大手金融機関で、貴金属・外為のアドバイザリーを務めた経験があり、そこで現地の人的ネットワークを構築した。
現場発の中国金需要について様々な生の情報が入ってくる。
まず、大手金融機関には、金を扱う部門がある。
中国では金流通の核は銀行だ。
中国人個人顧客に金を販売している。
中国国内では既に各行は現金輸送などのおカネのサプライチェーンを構築している。
国内支店に現金輸送車が廻っているので、金現物も、それに乗せればよい。
支店・駐在員事務所の数は各行、1万を超える。


売れ筋の商品としては、十二支のキャラクターつきの金地金が人気だ。
金、銀のメダルもよく売れる。
金関連の理財商品もあるが、ハイリスク・ハイリターンで、やや危ない商品だ。
機関投資家向けには金ETFもある。
純金積立も根強い需要がある。
少子化傾向が加速するなかで年金不安が社会問題化しているので、老後に備えた貯蓄は欠かせない。
一人っ子政策の影響で、夫も妻も一人っ子という夫婦が少なくない。
政府は二人目、三人目を奨励するが、将来への不安で、子供の数は増やせない。
そのような環境なので、金が選好されるのだ。
日本と異なるのは、金を嫌う人が少ないこと。
そもそも人民元より金を選好する傾向が強い。
仮想通貨も人気だったが、禁止されている。
デジタル人民元の実験は開始されている。
それからネットでの金売買も一般化している。


筆者は実際に現場で指導にあたってきたわけだが、ビックリするのは、販売計画の桁が違うこと。
なんせ人口14億人の殆どが文化的金選好度が高い。
大手行は3億、4億の規模で個人口座をかかえる。
それゆえ、筆者が日本で馴染んだ販売量の数字より、少なくとも、一桁多い数値目標が並ぶ。
純金積立の口座数、一行で目標1千万と設定されても、「控えめの数字」とされる。
なお、中国個人投資家気質は米国に似ているので、先物も人気だ。
決済を二日とか五日などと延ばすタイプの中国型延べ取引(deferred)が好まれる。
時期的には、これから始まる春節が販売のピークになる。
ただ、今年はオミクロン警戒で、厳しく人流が制限されているので、金需要も減少が見込まれる。
とはいえ、基本的には、中国人の金需要は根強い。
「金価格が下がるのはいつ?」と聞かれると、筆者は「中国人とインド人が金を嫌いになるとき」と笑って答えている。


参考までに写真3点添付する。


まず60億元紙幣(1949年発行)。
その60億元の購買力見本として下の丸窓にお米一握りが展示されている。

 

60億元紙幣

ハイパーインフレを経験しているので紙幣より現物の金が選好される。
銀行博物館に展示。


次は大手銀行の原点。
17世紀上海の金銀とおカネの交換業から始まった。
その当時の支店の様子が蝋人形館で再生されている。

 

大手銀行の原点

そして、銀行支店内の金関連掲示物。

 

銀行支店内の金関連掲示物