あの日経が、連日、日本株危機論を載せている。
20日月曜日朝刊「Inside Out今を解き明かす」では「日本株を買わない日本人」「新しい資本主義、貧しくなる」との見出しの10段記事で、「日本株を支えた日銀や公的年金の買いも今後は細り、いずれ売りに回る。このままでは買い手が誰もいなくなる」と異例の強い論調で危機感を露わにしている。
これは正論だと思う。
更に、21日火曜日の朝刊「マーケット総合面」には、「日本株に沈没の警句」「政策依存に限界、マネー流出」との見出しで、「日本沈没」を引き合いに出すほどだ。
ここまでくると、煽り気味と感じる。
更に続いて、22日には「社説」で「個人や企業の資金を市場通じて成長に」と題して、「残念ながら、岸田政権の投資や市場に関する政策の方向性は、逆のように見える」と論じた。
特に、企業が株主に利益を還元する自社株買いについて、規制の方向性が見えることを指摘。


「投資家は警戒を強めており、日本の株価が欧米と比べ下落しやすい一因になっている」と断じた。
社説ゆえ、マーケット記事より控えめな論調だ。
この一連の日経論調に同調するかのように、筆者の30年来の友人である澤上篤人さんが、「悪材料で急落する相場、バブル最終局面か」と題して日経に寄稿。
澤上節全開で、「いつのバブルも、崩れる時はアッという間である。どんなにカネ余りが続いていようと、バブル崩壊が誰の目にも明らかになってくるや、そこから先はもう一方通行的な売り地獄となる」と警鐘を鳴らしている。


悪材料で急落する相場 バブル最終局面か(澤上篤人):日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB1683J0W1A211C2000000/


筆者は、岸田政権誕生直後の時点で、10月12日付の日経電子版コラムで「フミオもジョーも株価にはクール?」と題して寄稿している。


フミオもジョーも株価にはクール?:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFL121G30S1A011C2000000/


株価を自らの政権の通信簿と位置付けたトランプ前大統領は、株価が急騰すると、してやったりとばかりに、自画自賛のツイートを発したものだが、バイデン現大統領は、株価=ウォール街=金持ちエリートの象徴との連想で、殆ど、株価にコメントすることはない。
なお、日本時間本日早朝の、オミクロン対策に関する講演では、バイデン大統領が珍しく株価下落に言及した。
21日付本欄で詳説した200兆円大規模予算案が廃案の危機にあることを問われ、「マンチン議員の発言で、ゴールドマンサックスは経済成長率を下方修正して、株価も急落した」と語っている。


話を日本株に戻すが、結局、日本企業は一般的に儲ける力に欠けるので、日本人の個人投資家マネーが、最近は米国株に流れている。
量的緩和による過剰流動性が株価水準をバブル的に引き上げているのは事実だと思う。
なにも、目新しい話ではない。
ただ、目新しいのは、株価礼賛傾向の日経や、人気日本株ファンドの創始者が、日本株危機論を唱え始めたことだ。
筆者は来年にも日本株暴落が起きるとは思わないが(起きると論じる人もいる)、巨大地震と同じで、今後いつかは臨界点に達して大暴落があるだろうが、具体的にいつになるか、特定は出来ない。
巨大地震と同じく、その有事への備えは必要だ。
いつ起こるか分からない有事に備えるということは忍耐力が要る。
コツコツ備えているのに、いっこうに何もおきないではないか。
こんな地味な努力は馬鹿らしい、と思いがちだ。
巨大地震同様だが、予測が外れてくれることが、実は、最も喜ばしいのだが、富士山付近で地震のニュースが流れれば、不安になる。
人間の心理は複雑に揺れる。
自然現象も投資も、地味な努力で備えを続けることが、実は、最も難しいことなのだと思う。
一部の金投資家には、株が暴落すると、してやったり、の如く、留飲を下げる傾向も見られる。
それは余りに短絡的だ。
公的年金の半分近くは株式で運用されているので、他人事ではないはずだ。
筆者が常に説いてきたように、ポートフォリオとして株も金も両方持って、初めてリスク分散効果が発揮されるのだ。