恒大集団発行の社債のデフォルト危機に関しては、「大きすぎて潰せない」ので、国によるステルス救済が不可避と書いてきたが、人民元建て債券に関しては、具体的なスキームが浮上してきた。
基本的には、国有不動産企業が、恒大集団の大型建設案件を買収するという手段である。
そのために、国有企業は「不動産企業買収資金調達」の目的で社債を発行する。
その特別目的社債を誰が買うのか、といえば、国策銀行などが想定される。
結局、公的マネーが注入されるわけだ。
国策銀行の不良債権が増えそうだが、これはこれで、お咎めはない。
共同富裕構想のなかで、露骨な巨大企業救済の印象を薄めるために、このような複雑なステルス救済案が浮上したと見られる。
更に、地方政府も直接にデフォルト監視委員のようなスタッフを派遣して、一連の過程に直接関与する。
恒大以外にも、デフォルトのリスクをかかえる不動産企業は多いので、中国の不動産業界で、大型買収案件が増えそうだ。
まさに苦肉の策といえよう。


なお、習近平政権が最も重視するのは、既に恒大マンションを全額前金で購入した人たちの救済だ。
ここは、最優先課題として掲げ、社会不安の原因にならぬように配慮している。
更に、みせしめ的に、恒大幹部を、「つるしあげる」ことも、共同富裕構想のなかでは必要となる。
以上は、人民元建ての債券に関する処置だが、ドル建て債券に関しては、通常のデフォルト処理を実行するだろう。


外国人の社債保有者には、情け容赦なく、損失を強いる。
既に、時価は額面の7~8割減の水準になっている。
それでも、ディストレス投資といって、デフォルト企業の社債を叩いて安く買い受け、転売して儲けるヘッジファンドが少なくない。
このようなリスクを引き受けるファンドがあるから、元本8割引きでも、債券市場で売買が成立するわけだ。


マクロ的視点では、不動産関連が中国GDPの29%を占め、中国個人資産の7割程度が不動産なので、中国経済成長減速を加速しかねない。
これも苦肉の策だが、不動産投機を防ぐために導入した不動産売買規制を、一部、緩和せざえるを得なくなっている。
習近平政権の綱渡りは続く。