まずは、このKITCO金価格24時間グラフをご覧いただきたい。
日本の祝日を挟み、一昨日が赤線、昨日が緑線。
つい先日は1,900ドル視野、金高騰の様相であったが、一転、1,700ドル台まで暴落。
キッカケはパウエルFRB議長再任。
この人事の影響で、日本では円安115円まで円安が進行したことで、日本人にも他人事ではなくなり、NHKニュースでもトップ扱いで報道された。
では、なぜ、パウエル再任が、これほどの市場大変動を誘発したのか。
そもそもパウエル氏は「当確」だったではないか。
市場は2022年利上げを織り込んでいたではないか。
震源地はホワイトハウス。
バイデン大統領にある。
インフレが米国一般市民生活を直撃して、来年の中間選挙を控え、大きな政治問題となった。
バイデン氏も、無策では済まされない状況だ。
そこで、インフレ対策として、FRB議長人事を有権者に強く印象づける必要に迫られた。
先週は、バイデン氏が「4日内に人事決定」と語ったが、決断が遅れ、「感謝祭祝日前には」と変わり、結果的に市場が焦れた。
待たされると、これは対抗馬ブレイナード氏起用か、との憶測が流れる。
そして日本の勤労感謝の日の祝日直前に、FRB議長はパウエル氏、ブレイナード氏を副議長に指名という妥協の決断を発表した。
市場は、ブレイナード氏のほうがハト派色は強いから、この人事は、ややタカ派寄りとの見方。
更に、インフレを抑え込むことが政治的には優先課題ゆえ、これで利上げせず、インフレを放置すれば、バイデン大統領は「指名責任」を問われる。
逆に、インフレ退治に成功すれば、来年の中間選挙にも民主党有利の材料になる。
結局、バイデン大統領もパウエルFRB議長も、インフレ封じ込めの利上げをしなければ、「無策」の誹りを受けかねない。
このような状況下で、利上げを覚悟していたはずの市場も、改めて、利上げを前提に反応したわけだ。
具体的には、米ドル金利、特に、政策金利と連動する米2年債利回りが一日で15%もの上昇率で急騰。
ドルインデックスは一気に66.5まで急伸。円安115円示現。
ドル金利高、ドル高でNY金は売り一色。
ここで金の下げ幅が大きくなったのは、先物主導の展開だったから。
昨年のETF主導との対比が鮮明だ。
本欄でも繰り返し書いてきたように、投機色が極めて強い。
筆者は、これでは丁半博打とまで断じた。
特に、投機的買いポジションの売り手仕舞いが目立った。
相場の形も悪いので、空売りも増えた。まさにプロの空中戦の様相だ。
冷静に見れば、昨晩のNY市場では、既に、2年債利回りは頭打ち。
2022年6月までに利上げの確率も若干下がってきた。
市場の期待インフレを示すブレークイーブンインフレ率もやや下落傾向。
パニック的な初期反応は一巡の感がある。
1,800ドル前後の水準で、振り出しに戻り、今後の経済指標、FOMC要人発言、そして空席のFRB理事人事などが材料視されよう。
それにしても、金市場の利上げアレルギーの強さを見せつけられた。
さて、今日の写真は面白いよ。
先日発売されたばかりの日経マネー最新号、金別冊での対談。
この3人とも、例年、同じような相場観ゆえ、私が敢えて弱気派になって、議論にメリハリつけ盛り上げようとの涙ぐましい(笑)配慮。
そもそも、プロが全員強気になると、相場は下がる傾向があるしね。
その結果、議論としては読者の参考になり、面白くなっていると思う。
立ち読みではなく、買ってあげてね(笑)
私は監修役として、プロ3人対談のほかに、巻頭8ページ、更に、コモディティ価格高騰について日経コモディティエディターと対談4ページこなしているよ。
ぶっちゃけ、私は、後輩二人ほど強気ではないが、基本的には、金相場は歴史的高値圏を維持するとの見解。
これについては、いずれ、語ろう。