注目の10月雇用統計は、事前予想45万人増のところ53万人増。
更に8月9月分が大幅上方修正。失業率4.6%まで改善。
平均時給も前年同期比4.9%上昇。
非常に良い数字が並び、米国株価は上昇。
しかし、米債券市場でドル10年金利が1.4%台まで急落したことでドル安に振れ、金市場には思わぬ追い風が吹いた。
漁夫の利のごとき金高だ。
これだけ良い雇用統計なら利上げ観測は益々強まり、ドル金利は上がるはずなのに下がったのは何故か。
パウエルFRB議長は、テーパリングは開始する条件は整ったが、利上げは別物で、より厳しい条件を満たさねばならない、と説いてきた。
利上げのハードルは高いのだ。
今回の雇用統計だけでは、まだまだ利上げを正当化できない。
パウエル氏は、利上げはまだまだ先の話とも語っている。
それゆえ、ドル金利が下落したのだ。
雇用統計発表で一区切りとなり、債券投機筋が、膨らんだ米国債売りを巻き戻したことも、ドル金利安の一因といえる。
NY市場では、「謎の金利安」とまで言われている現象ゆえ、それが追い風となり急騰した金は漁夫の利を得たわけだ。
筆者は、中長期的なドル金利上昇は続くと見ている。
今回の意外な金利安は一過性であろう。
10年金利が1.4%台まで反落したところで、更に1.2%まで下がるのか、再び1.6%以上に続騰するのか。
筆者は後者だと思う。
なお、絶好調ともいえる10月雇用統計で、心配な部分が一つある。
労働参加率が61.6%と相変わらず上がらないことだ。
コロナ前には63%台であった。
なまけ癖がついたのか、コロナが落ち着いてきても、復職・求職しない労働者が多いのだ。
まだ感染を怖がって働かない人。学校再開も不透明なので、子育てのため働けない女性。
この際、違う職種に転職するため自己啓発にいそしむ人。
コロナ前には働いていた高齢労働者のなかで、もうこの際引退・隠居を決め込んだ人。
理由は様々だが、労働市場の規模が縮小しているのかもしれない。
ここはFRBも気になるところだろう。
金急騰も、額面通りには受け取れない。
なお、今週、米消費者物価指数発表がある。
インフレ上昇が続けば、金のレンジ上抜けも考えられる。
上値抵抗線は強いが。